ー “愛”は、サウンドも歌詞も本当に繊細ですね。恋をした時の臆病になる気持ちが溢れていて、それがオルガンの音色とぴったり合っている。
この曲はオルガンを弾いてもらい、途中から僕がピアノで入る。この2つの音だけで構成されています。オルガンってそれひとつだけで成立する楽器ではあるんですが、すごく奥行きがある楽器なので、逆にリズムが取りづらいという人もいるんです。
ー 確かにそうかもしれないですね。
恋愛に対して臆病になっている気持ちがテーマなので、それこそオルガンと声が探り合いながら歌っていくのが良いと思ったんです。
ー Kくんはもうご結婚されてるけど、恋愛に関してはガーッと突き進むタイプ?
どうだろう?でもガーッとはいかないかも。観察はするけど。
ー 観察?
どういう人なのかなとか。しかもこういう時代だからFacebookとかTwitterで何でも見れちゃうじゃないですか。
ー 確かに(笑)。
具体的にどうこうではないけど、つぶやきによっては「あぁ、こういう人駄目だぁ。」って途中で諦めることもあるかも(笑)。昔はSNSなんてないから、実際に会った時の印象とか、友だちに紹介した時の対応を観ましたね。だからすぐにはいかない。最初はこの歌詞のように、ちょっと臆病になる部分もあるかもしれないです。というか、今思えば、臆病になっている時が一番楽しいし、身体から一番恋愛物質のような何かが出ている気がするんです。両想いになってからは、違う形の愛が生まれるじゃないですか。
ー 安心感も出ますしね。
そうそう。だからこの愛は、また別なのかなと思うんです。「これは片想いって言った方が良いのか…両想いではない気もするんだけど…うーん、どうなんだろう。」って考えている時期。僕は、恋愛においてはこの時期が一番好きです。
ー 恋愛ソングが多い中で、“夏の夕暮れに詠うバラッド”は男同士の友情のような、昔を顧みて少し切なくもなるけど、決して後ろ向きな感じではない歌詞が好きです。
“Superサラリーマン”もそうなんですが、男性が聴いて、尚かつ歌ってもらえるような曲を作りたかったんです。それと僕が軍隊に行った時に、きっとみんなこう思ってくれたんじゃないかということを書きました。日本を離れることに対してすごく寂しがって、戻ってくることを熱望してくれる方もいたけど、結構ライトな感じで「あの時ああだったね、こうだったね。だからお前なら大丈夫だよ。」って言ってくださる方もいて。だから僕も「うぃーっす。じゃ、行ってきまーす。」みたいな感じでした(笑)。
ー いいですね。「お前なら大丈夫だよ。」という言葉は、絶対的な信頼感があって。それと気になったのは、この曲をヘッドフォンで聴くと音が回るというか、左右で音がポンピングするというか。
それはきっとローズエレピでそういう効果を使っているので、左右でコーラスが動いているんだと思います。
ー 他の曲と比べてもその印象が一番強かったので、すごく立体感を感じてました。
あー、嬉しいなぁ!この曲は唯一のピアノレスなので、違う楽器の効果で音を埋めてみたんですが、演っていても面白かったんです。
ー そういうアイデアは、最初から生まれているもの?
はい。曲も歌詞も出来てメンバーと打ち合せをした時に「ピアノをずっと弾くのってつまらないね。」という話になったんです。去年のライヴから、ピアノを弾かずにステージ前でマイク1本、メンバーも寄って歌うということをしていて、それがすごく良かったので、そういう感じに出来たら面白いんじゃないと。サウンドがきゅっと縮まるというか。
ー 生音ということ以外で、アルバムに対してのテーマやコンセプトは何かあったんですか?
70年代に活躍したザ・クルセイダーズというグループがいて、昔は「何で頭スタートのテンポと最後のテンポがこんなにズレているんだろう?キッチリ合わせなきゃいけないところが何でこんなにバラバラなんだろう?」って思っていたんです。それは僕の音楽知識が浅かっただけで、本当はすごく巧い人たちなんですが、高校生の時に彼らの音楽を聴いて「この人たち、めっちゃ下手だな。」って思っていたんです(笑)。でも自分もミュージシャンになった今、きっちり合わせる演奏もしてきて、音楽って隙間や空白がある方が自由に物書きが出来ると気付いたんです。聴いている側としても「もう一回聴いてみたい。」と思わせてくれるだろうし。自分のタイミングやコンディションで違う聴き方が出来るというか。
ー すごく分かります!
それは演奏者も同じ。だから、とにかく完璧にはしないということは気をつけましたし、もしかしたら一番のテーマだったかもしれません。
ー「これでもか!」ってギチギチに隙間なしで作った曲を並べたアルバムは、個人的にですが、結構何回も聴けなかったりします。
あー、そうかもしれない。すごく名曲だし良いんだけど、その名曲を立てる為に違う世界観を表現する楽曲は面白いし、そういうサウンドも必要な気はします。打ち込みならそういう必要はないのかもしれないけど、やっぱり生楽器は特に隙間が大切になる気がします。
ー そうですよね。
特に今回僕がすごく思ったのは、音や楽器は“生き物”だということ。演奏者やその空間が変われば音の全てが全然違うし、聴いている人のその日の気分によっても違う。生き物であればずっと同じことは出来ないし、そんなに完璧なものを求められても実は面白味に欠けるのかもしれない。予想外なことがないと飽きてしまうという思うんです。
ー なるほど。
だから実際このアルバムを今、最初から最後まで聴きかえしてみると「ここミスタッチだな。ここはみんなのタイミングが合ってないな。…あ、ここはテンポが早いな。」という部分が沢山あるんです。それをみんなとチェックしながら「いや、でもあえてこのままいこう。」という部分がすごく多くて。だからそういう点では、僕としても初めての試みなんです。まぁお互いを信じているからこそ出来るんですが、オール生音で演っている以上はその良さを伝えるべきだろうと思いました。
ー 伝わります!今は1曲単位で曲を買うことも聴くことも出来る時代だけど、『Ear Food』はアルバム通して聴いて欲しいと思いました。 例えば“夏の夕暮れに詠うバラッド”と“Superサラリーマン”の曲間の短さとか含めて。
素晴らしい!そこを見てくれるのは嬉しいです。まだツアーは序盤ですが、ツアーに行くのが久しぶりの土地もあるんです。7年間行っていなかったとか。そういう場所も多いので、やっぱりライヴを楽しめるというのをこの1枚で皆さんに感じてもらえれば嬉しいです。
K 10th anniversary K〜thanK you!〜
※終了公演は記載しておりません。
8/9(日)東京 よみうりホール
8/14(金)大阪 メルパルク大阪ホール
8/15(土)福岡 イムズホール
8/17(月)大分 Drum Be-0
8/18(火)長崎 Drum Be-7
8/23(日)兵庫 新神戸オリエンタル劇場
8/24(月)愛知 ダイアモンドホール
9/2(水)北海道 札幌市教育文化会館・小ホール
9/4(金)青森 青森Quarter
9/5(土)岩手 岩手県公会堂 21号室
9/18(金)香川 高松オリーブホール
9/19(土)愛媛 松山Vivit Hall
9/21(月・祝)広島 BLUE LIVE HIROSHIMA
9/23(水・祝)岡山 ルネスホール
9/25(金)奈良 なら100年会館・中ホール
9/26(土)滋賀 びわ湖ホール 小ホール
10/4(日)神奈川 関内ホール 大ホール
10/9(金)宮崎 NEW RETRO CLUB
10/10(土)鹿児島 キャパルボホール
10/12(月・祝)熊本 B.9 V1
10/13(火)佐賀 佐賀GEILS
10/17(土)群馬 ベイシア文化ホール
10/18(日)山梨 コットンクラブ
10/23(金)茨城 茨城県立県民文化センター 小ホール
10/25(日)栃木 佐野市文化会館 小ホール
10/31(土)沖縄 桜坂劇場 ホールA
11/2(月)山形 山形市民会館 小ホール
11/3(火・祝)宮城 仙台イズミティ21 小ホール
11/7(土)秋田 秋田カフェ・ブルージュ
11/8(日)福島 創空間 富や蔵
11/13(金)徳島 徳島市シビックセンター ホール
11/16(月)高知 ラ・ヴィータホール
11/20(金)島根 松江Canova
11/21(土)鳥取 BEXX米子
11/23(月・祝)山口 Shunan RISING HALL
11/27(金)静岡 マリナート 小ホール