ー 今迄はそうではなかった？

ゲイリー：『BeVeci Calopueno』の場合は、歌詞に関しては僕が納得いくところ、アレンジに関してはユコさんの納得いくところの限界に挑戦した作品だったんです。でも今回は全員が納得いくものということが大切でした。

ユコ：あるべき姿に持って行くという作業をやったね。

ゲイリー：全員の力を総動員でね。


ー 実際、完成してご自身達としてはその仕上がりはどうみていますか？

ゲイリー：これは確実に自分達にしか作れない作品なのに、個人が全員自分の殻を破ったというか、ハードルを超えているんですよ。今回はそれが吉と出たなと思います。でもそういうのって、必ずしも吉と出るとは限らないんですよ。みんなの力を総動員して、最小公倍数になる危険もあるやり方だったので。

ユコ：玉虫色みたいになっちゃうしね。


ー なるほど。

ゲイリー：でも今回は良い相乗効果を生みました。確かに自分の歌だし、自分のドラムなんだけど、「オレ、こんなに出来たっけ？」という感じがありましたし。


ー おぉ!!

ユコ：それまでに、いくつか作品を同じメンバーで作ってきているので、信頼関係や、相手の求めるものなどが分かってきていたというのも大きいかもしれません。

ゲイリー：でも最初からこのやり方でやろうと思ったら絶対うまくいかない！

マルガリータ：うん、そうだね。

ユコ：そう。でも色々なやり方を経て、今チャレンジするというのは、すごく現実的に考えました。


ー 今回のレコーディングでは、常識だと思ってた事を覆される日々だったとのことですが、具体的にはどういうことですか？

ゲイリー：レコーディングスタジオに入ったら、もう準備していたものをちゃんと演奏するというのが、普通のレコーディングだと思うでしょ。


ー はい。

ゲイリー：でもうちの場合は、レコーディングに入る前に、決まっていたことを壊し壊し壊し…という作業をレコーディング中にやるんですよ。


ー えー! それって、相当コワいですね。

ゲイリー：コワいんですよ。だから気が抜けないし、ずっとこの集中力が切れないように切れないようにって意識し続けて、毎日メガ牛丼食べて乗り切りました！


ー メガ牛丼!!(笑）

ゲイリー：お陰でちょっと太りました（笑）

ユコ：でも実際録ってみて分かることが沢山あるんですよ。だからいざレコーディングで演奏してみて「考えていたのとちょっと違うな」と思うと、すぐ変えていくという作業でした。

マルガリータ：結構大変でしたけどね。

ゲイリー：毎日スタジオでライヴしている感覚だったね。

マルガリータ：そうそう。


ー でもある意味、それってライヴですよね。

ゲイリー：そうですね。レコーディングとライヴって全然別モノだと思っていたんですけど、意外とノリは一緒だなと思いました。とにかく一瞬一瞬が勝負だったので。

ユコ：やっぱり柔軟性というのは大切ですね。その状況に応じてアジャストしていくということが。


ー それがミュージシャンとしての振り幅を大きくするかもしれませんね。私は本当にモーモールルギャバンの楽曲が本当に大好きなんですよ。

メンバー：ありがとうございます！


ー 徹底的な甘美さ、カオスさ、プログレ的音の破壊力と全体からかもす変態性…これは私の中で最大の褒め言葉ですが（笑）。

ゲイリー：世の名だたる偉大なミュージシャンって大体変態ですよね。

ユコ：そう！あんな凄い楽曲達を作れちゃうんですもん。

ゲイリー：やっぱり変態です!!

ユコ：多分常に面白いものを探していると変態になってくるんでしょうね（笑）

ゲイリー：いい音楽って、人とは違うものじゃないですか？その人にしか出来ないものを追求していくと、きっとおかしくなっていくんですよ。

ユコ：何かしらの変態性は出てくるね。


ー そうかもしれない（笑）。そういう意味での変態性というのはミュージシャンとして最高にカッコイイし、モーモールルギャバンの音はそこが際立っている上に、潔いんですよね。

ユコ：その曲のあるべき姿というのはすごく意識して作ります。アレンジや言葉。それからマイクの立て方も含めてエンジニアさんやスタッフ達と話しあって、イメージを共有しながらきっちりと調整しまます。そういう作業を特に今回は意識して作りました。

ゲイリー：「この音だったらここまでやらないと説得力ないよね」とか「この言葉を使うんだったら、その後の言葉はこうでないとありきたりになっちゃうよね」ということはよく話し合います。中途半端なものをその場その場で排除するという作業はすごく大切にしています。


ー モーモールルギャバンの音を聴くと、その部分はすごく納得できます！

ゲイリー：だって、予定通りになった曲ってないよね（笑）

ユコ：そうそう（笑）。でも、一旦調整がしっかり出来たら、そこからの作業はとても緻密にやっていきます。 まぁ細かいようで、案外ざっくりしていたり、大胆にやるところもありますが。

ゲイリー：例えば「24歳の時を思い出してドラムを叩こう！」って思った時に、「惜しい! 今のは22歳だった！」とか「今のは26歳だった」とかいう、ちょっと頭が悪い感じの微調整をしています（笑）