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スキマスイッチ「musium」インタビュー Page3

スキマスイッチ「musium」インタビュー Page3


ー 今回、「アイスクリーム シンドローム」「さいごのひ」はアルバムヴァージョンでの収録ですが、それぞれ、どういうところの変化を大切にしましたか?

大橋:やはりアルバムというのは、シングルを聴いてくれた人も違う楽しみ方ができるようにというところがあるんですよ。「さいごのひ」は作った時からそうだったんですが、テーマが僕らの中で、今迄にない位に世界観が広くて深いし、メッセージ性も強い曲だったので、逆にそこにイメージが偏るのが嫌だったんです。それこそ何もタイアップもなく、とにかく歌うことで聴いてくれる人に伝えていこうというスタンスで始まったんですが、このアルバムが出来上がるまでの間、ずっと歌ってきて、歌そのものが変化してきていたんです。だから自分の中で、もう一度歌ってみたいと思いました。それはシングルヴァージョンが気に入らなかったというわけではなく、やはり歌というのは変化していくものだと思うんです。歌い回しや言葉の乗せ方とか。それで新たなヴァージョンで再録して、歌い直したのを聴いた時に、余計なものがなにもいらないんじゃないかという判断で、コーラスなどを全部カットしたんです。シングルでは入っていたコーラスやストリングスを全部カットすることによって、歌でもっていく形に作り直してみました。


ー 歌が変化するように生活環境が変化すると楽曲のとらえ方というのも変わってくると思うんです。すべてをそれ中心に考えるのも違うかもしれませんが、どうしても考えるのは震災のことですが、歌い直す時点で、大橋さん自身がそこを意識した部分はありましたか?

大橋:やはり震災の後、色々考えました。でも、僕たちはスタイルとして直接的に影響を受けるのをやめようと2人で判断して決めたんです。というのも、人それぞれ震災に対しての想いというのはあると思うんですが、例えば被災した人達。それは現地で被害にあわれた方もそうですし、実際そこにはいなかったけど、テレビを観て心が傷ついてしまった人達。色々な形で被災した人がいると思うんです。直接的被害にあわなくても、それを観てショックを受けた人は被災していないかというと、僕はそういう人も被災者だと思っているんです。それは僕らスキマスイッチも同じですし。でもそこで僕たちが音楽のスタイルを変えるのではなく、同じスタイルで音楽を続けることによって、例えば時間の経過と共に気持ちの余裕が出来て音楽を聴いてみようと思った時に、スキマスイッチの音楽を選んでくれたなら、昔と変わらず音楽をやっていることに、もしかしたらほっとしてくれるのかなと思ったんです。だから今回のアルバムには震災後に作った曲もありますが、基本的には影響を受けないスタンスでやっています。でも実際に震災が起こった後、僕は歌を歌いたくなくなりましたし、まず何に向かって歌っているのかも分からなくなったんです。単純に歌うということに対して気持ちが乗らないというか。だから全く影響を受けないというのは難しいと思うんです、実際は。特に声というのは自分のメンタルに影響されやすいので100%それを考えずに歌いましたと言えば嘘になりますね。ただ、震災があったから歌が変わったかというと、それだけではないです。

常田:僕たちは不特定多数の方に対して音楽を届けているので、やはり震災とは関係のない部分で、スキマスイッチの音楽を待っている人が日本全国にいますからね。でも、ヴォーカリストとして全く影響を受けていないかというと嘘になるというのは、すごく健康的だと思います。だって楽器が奏でているわけではなく人そのものですからね。


ー「LとR」は比喩の感じがおもしろいですが、具体的に歌詞づくりというのはどういう形でされましたか?

常田:この曲に関しては初めての手法として、卓弥プロデュース的な部分がありました。歌詞のたたき台は僕が作ったんですが、卓弥の頭の中には構築された原作のようなものがあって、それに対して僕が脚本を書くようなものです。


ー どうしてそのような手法を考えたんですか?

大橋:実はこの歌詞、4、5回書き直しているんです。シンタ君は何回も色々な方向から、たたき台を持って来てくれていたんですがどれもしっくりこなくて。それで2人でどんなストーリーか考えてみようという時に、僕が原作を考えていったんです。「こういうのはどうかな?」って。それでシンタ君がその流れで書いて来てくれるということになりました。


ー 大橋さんの中にあった原作というものはどういうイメージだったんですか?

大橋:まず今回のアルバムは、あまり可愛い曲というのは含まれずに、少し哲学だったり変わった方向から物事を観た歌詞の楽曲が並んでいるアルバムだったらいいなということは最初に2人で話し合っていたんですね。というのも、日常のワンシーンを切り取って、そこに主人公がいてその主人公がどうなっているという歌は沢山書いてきたので、もっと世界観がぐっと広がった曲ならいいと思っていたからなんです。そういう中で何か面白いアイデアはないかと考えた時に、これはふとした瞬間いつも思うことなんですが、僕たち二人組というのは二人組だからこそ出来る音楽というのがあって。それを歌詞に落とし込めたら面白いと考えたんです。例えばそれはLとR、右手と左手という見方もありますし、その右手と左手の役割が違うように僕たち二人の役割も違うという風に重ね合わせてくれる人がいても面白いかなって。聴く人によって膨らみ方が全く違うような音楽だったらこの曲は成功なのかなと思っていたんです。


ー 私も、この歌詞はお二人のことかと思って解釈していました。

常田:おー(笑)

大橋:右手と左手がいて、左手は右手を憧れているのに対して、右手は”サウスポー” と呼ばれる左手のことに憧れている部分はある。でもお互い役割は違うんだけど2つ重なることで、片方だけでは出来なかった凄いことが出来るという落としどころの歌というのは面白いんじゃないかなという話をして、シンタ君がたたき台に書いてくれたのものをブラッシュアップしていったのがこの曲です。


ー「ソングライヤー」は、まさに音楽シーンの真ん中にいるスキマスイッチさんがテーマにしたということに興味がありました。

大橋:これはですね…(笑)。これは、たまにそういうことを書きたくなる瞬間があって、今回書いてみて、それまではずっと皮肉を歌いたいと思って書いていたんですが、皮肉や怒り、憤りというのは、ひとつの人間の生きるパワーだと思うんです。それがプラスになるかマイナスになるかは置いておいて。人間は何かに腹を立てたり上手くいかなくて憤りを感じたりすることを消化しながら生きていくじゃないですか。消化しきって心の中から消し去っているイメージだったんですけど、チリがつもるように消しきれていない欠片がどんどん溜まって行って、それを一気に吐き出してリセットする為に、自分はそういう皮肉を歌うことがあるなと思ったんです。今回も曲を書いていく中で、曲を書くこと自体は自分がやりたいことではあるんですが、そこにストレスを感じることもあるわけですよ。そういうものを曲にして吐き出すことによってバランスを保っている気がするんです。


 

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