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音楽と共に生きたジョージ・ハリスン58年の人生の軌跡をアカデミー賞受賞監督マーティン・スコセッシが描いた音楽ドキュメンタリー映画「リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」を、11月19日より上映中の角川シネマ有楽町(東京・千代田区)にて、ジョージ・ハリスン没後10年のメモリアルイベントが11月29日(火)、開催された。
これは映画の上映も伴うもので、ロビーには献花台が用意され、集まった人達はそれぞれの想いを胸に、花を手向けた。そして、ビートルズにとてもゆかりの深い音楽評論家の星加ルミ子氏と湯川れい子氏を招いてのトークイベントへと続く。ステージにはジョージ・ハリスンが所有していたギター、57年デュオ・ジェット仕様を再現したジョージ・ハリスン・シグネチャー・デュオ・ジェット「G6128T-GH」も飾られて、MCの襟川クロさんによって、 2人が招き入れられると大きな拍手が湧いた。
星加ルミ子氏といえば、『ミュージックライフ』編集長をつとめ、日本のジャーナリストとして初めてビートルズの単独会見をした人で、湯川れい子氏も早くからエルビス・プレスリーやビートルズを独自の視点による評論・解説で日本に広めた一人。このイベントに集まった200人の観客が日本人ではビートルズと面識ある数少ない二人の貴重な話を興味深げに楽しんだ。
湯川氏は、まず映画に対して「ファンとして観るだけでなく、色々と知らなかったこともあり資料的にみても素晴らしいものになっていますので、今日はジョージ10回目の命日にこのようなイベントにお招きいただいて本当に嬉しく思っています。」と語り、星加氏は「みなさんの中には、ビートルズで人生が”いい風”に狂ったという人も沢山いらっしゃると思うのですが、かつて自分のアイドルだったグループのメンバーが遠くへいってしまったというのは胸にぽっかりと穴が開いたように、とても寂しく感じるものですね。そんなジョージ・ハリスンの命日だということでジョージを忍びながら(映画を)ご覧になっていただきたいと思います。私が知ってるかぎりのジョージ・ハリスンのお話なども少ししていきたいと思います。」と語り、会場全員によって黙祷を捧げた。
その後、当時の様々なエピソードを二人は語ってくれた。
湯川氏は、66年にビートルズが来日した際、読売新聞社が出版した来日特集号のキャップを任された為、当然インタビューなども出来ると考えていたが、ビートルズは極東ツアーの全ての権利を別の通信社に渡していた為、日本では記者クラブのみインタビューが可能で、自分は記者会見に参加させてもらうのが精一杯だったと言う。また、同記者会見にのぞんだ星加氏と共にメンバーの名前を呼んではキャーキャー騒ぐなどして、後から叱られたというエピソードを「ミーハーの代表だったから」と笑いながら語った。また、今では当たり前となっているが、当時としては異常とも受けとられたコンサートでの熱狂ぶりや、武道の為の武道館で外国人ミュージシャンのコンサートをやるということへの反感やその他社会問題にまでなった歴史的背景など、当時を振り返った。
武道館で普段使用している腕章をビートルズメンバーが欲しがっているため、それを届けるという名目で初めてビートルズと対面した湯川氏だが、ジョージは「主催者」という腕章を渡されて「じゃあ僕が一番偉いんだ」と、とても喜んだという。(ちなみにポール・マッカートニーは「連絡係」だそうだ)
当時のジョージは年齢的にも一番年下ということもあり、いわゆる”パシリ”のように使われることもあったが、その腕章をプレゼントした時の笑顔が、今回の映画と照らし合わせると、「あぁ、この時期だったのねと思うと、不思議と今、重く感じます。」と語った。
また、星加氏はアビーロードにあるEMIのレコーディングスタジオでレコーディング後のビートルズに取材した時、ジョージの第一印象は「静かな人」と感じたらしい。「嫌がっているわけではなく、ニコニコしていて、いつもギターを抱えていた」と繋げ、それでもインタビューで「Yes」か「No」しか言わないジョージに「それでは原稿にならない!」という苦労話を明かされると、会場からも笑いが起こった。
その後湯川氏は、(ジョージの)生涯の親友とされているエリック・クラプトンとジョージ、そしてパティ・ボイド(ジョージの元妻で、その後エリック・クラプトンの奥さんとなる)の3人の関係を当時ファンとしてやきもきして観ていたというの話をし、そこも映画を観ると紐解かれる部分があると思うと星加氏は繋げたが、この映画ではジョージの精神性についてもとても細かく描かれているし、ジョンとポールの影に隠れて、いままで分からなかった部分も分かると、スコセッシ監督によるこの映画を絶賛した。
最後に2人は「この映画ではジョージの曲だけでも27曲出てきますが、それが今迄なかなか表に出てこなかった。このジョージにして “第三の男” といわれたビートルズはすごいグループだったんだとクリエイターとして、改めて思います。(湯川)」「随分何度も会っているわりにはジョージのことを分かっていなかったなと、この映画を観て思い知らされたんです。ジョージ、あなたのことを少しは分かった気がするので帰ってらっしゃい。といいたいです。(星加)」と語り、トークイベントは終了した。
その後、二人は献花台で花を手向け、報道陣より「今、何を話されていたのですか?」という質問をされると、湯川氏は「不謹慎なことを話していました。」と笑いながら、二人はジョージの容姿の美しさを改めて感じたと話し、「60年代以降の音楽シーンや社会の中におけるジョージ・ハリスンの偉大さ」を聞かれると湯川氏は「私は凄さというより、末っ子的に他の3人に依存している人なのかと思っていましたが、インドに行って精神的なものを身につけてからは非常にしっかりと自分を持って生きて来た人だと改めて思いました。」、
星加氏は「まさに、”リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド” で、私達は目に見えるもの、物質社会の中でその価値観をずっと追い求めてきた気がしますけど、バブルが弾けて世界的にも不況になって、改めて人間の持っているもっと深いもの、地球というか自然に生かされている、まさにジョージ・ハリスンの “HERE COMES THE SUN” なんてまさにその象徴的な歌ですけども、そういうものに生かされているんだという宗教とは別のスピリチュアルティー、真に私達が気付かなければいけないことを彼は追い求めていたわけだし、今私達がやっとそのレベルに近づけたという気がします」と語った。
そして最後にエムファンでも「ビートルズが活躍した時代とは音楽のあり方も変わってきましたが、今後ビートルズのような、またそれを越えるようなミュージシャンは出てくると思いますか?」という質問をお二人にしてみた。
それに対して湯川氏は「メディアが変わって、情報の運び方、システム、聴き方が違うということでスケールとしてどうなのかは分かりませんが、もし私達がそういうものに気がついて、育てることが出来たら、それだけの才能は出てくると思います。」と語ってくれた。
そして星加氏は「私は、今、この時点で半永久的に残って行く音楽というのは、ベートーベン、モーツアルト、ビートルズだと思うんです。(ここで、湯川氏はそれにエルビス・プレスリーとマイケル・ジャクソンを加えたいというが星加氏は、まったくスペシャルという意味で違っていたようだ)ベートーベンやモーツアルトの時代も才能ある人は沢山いたが、卓越した才能という意味ではこの二人には敵わないし、それと同様にビートルズの時代も沢山の才能はあったけど、彼らのような才能は独特なものだと思います。これだけのものを持って、しかも4人揃って、たかだか7年間ですけども、やっぱり居たというのは非常に特異なものだと思います。」と言いながら、これから先は仮定の話なので、今後そういうミュージシャンが出てくるかは分からないと語ってくれた。
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