ー レコーディングで一番大変だった点はどういうところですか?
ryo:湿気です。
ー 湿気?
ryo:湿気でマイクの調子が悪くなったことがあったんです。それで一旦レコーディングを中断して除湿器を買って来てもらいました。その上、エアコンを回すと温度の寒暖差でもマイクがやられるので、録る前にスタジオをガーッと冷しておいて、本番で止める!だからchellyちゃんも大変だったと思います。
ー 人間も大変ですが、マイクって、それほどまでに繊細なんですね。
ryo:そうなんですよ。そうやって出来たアルバムです(笑)
ー「ギルティクラウン」というアニメの世界を通じて、このアルバムで最もイメージしたことは何でしょうか。
ryo:元々このアルバムを作るにあたり、いのりちゃんが感情を獲得していく様子をアルバムで描いていきたいと思っていました。アニメ本編の中でEGOIST自体は熱狂されていて沢山の支持層が付いているけど、賛否両論色々ある。そういうサマは語られているんでが、じゃあ実際どういう曲を歌っているのかという部分はさほど描かれていませんでした。だからその部分を補完するというか、どういう曲があってどんな歌詞やメロディにファンは熱狂させられたのだろうと考えて、喜怒哀楽を含んだ、全てが魅力的に見えるものを一個一個組み立てていこうと思ったんです。それがアニメ本編の進行と重なって、いのりが感情を徐々に獲得していきながらも最後はいなくなり、遠い世界で見守っていくというニュアンスで、「ギルティクラウン」は完了し、それと同時にEGOISTも1stにして最後のアルバムというイメージです。でもここにまたひとつの設定があるんです。
ー どんな設定ですか?
ryo:このアルバムは、いのりがいなくなってから発売したのではなく、元々いのりが出てくる前、「ギルティクラウン」が始まる前からアルバムは存在し、その上で「ギルティクラウン」が始まっているという設定です。
ー それは何故ですか?
ryo:このアルバムは、いのりの予言書のようなものなんです。CD通りに歌っていくと、奇しくもいのりは「ギルティクラウン」の物語をそのままトレースする形でいなくなってしまう。だから、このアルバムを一度聴いてもらった後、アニメ本編を第一話から観てもらいたいという気持ちがあります。8/22にBlu-ray&DVD「ギルティクラウン8」が発売されましたが、勿論最終話まで出ますので。
ー そういうストーリーがあったんですね!
ryo:そうなんです。何気に壮大なストーリーが隠されています(笑)。
ー これはやはりアニメ本編を観たくなりますね!
ryo:そうするとアルバムも含め、成る程!という部分がまた出てくると思います。
ー では、楽曲について教えていただきたいのですが、M1の「原罪の灯」はイントロレスで始まるchellyさんのアカペラがすごく印象的でした。
ryo:実は最初のアカペラ部分は全く予想していなかったんです。
ー というと?
ryo: 最初は普通にイントロも考えていたのですが、「chellyちゃん、ちょっと歌ってみて」って、試しで歌ってもらったら節回しがすごくいい感じで。特に少し伸ばすところとか完全にchellyちゃんが作った曲かのように聴こえたので、これはそのままアカペラで構成しようということになりました。
ー それがかえって楽曲の印象を強くしたというわけですね。しかも、メロディやタイトルの“原罪”という言葉、“パウル” という歌詞も含め厳粛な気持ちになります。
ryo:キリスト教的な感じです。
ー この曲をメインで支えている音はギターですか?ハープのようにも聴こえたのですが。
ryo:実は両方とも鳴っています。片方はクラシックギターで、もうひとつのハープは中国のグーチンという古琴です。
ー グーチン?
ryo:日本の琴の原型となっているものです。
ー なるほど。独特の音色が美しいです。そして打って変わってというか、タイトル曲「Extra terrestrial Biological Entities」は、デジタルの質感全開のクラブ寄りなアッパーで上昇するリズムとメロディが、あがりますね。
ryo:なかなか今風というか。
ー そうですね。
ryo:今年クリス・ブラウンとアッシャーが立て続けにアルバムをリリースしたんですが、2010年位は結構固めの音色だったのに対して、今年位からはすごく柔らかめのサウンドに仕上がっていたんです。そういう曲を作ってみたくて、サウンド面ではそういう部分に影響も受けましたし、意識しました。でも、そういうサウンドにどんな歌が乗るんだろうと考えて…というか、その頃位からですかね、chellyちゃんの凄さを感じたのは。メロディラインも元はああいう感じではなかったんですが、chellyちゃんが歌った感じがすごく良くて、「その感じにします!」っていう(笑)
ー あはは。ryoさんが従ってしまったような?
ryo:そうそう(笑)。結構そういう曲が多いんです。4、5曲あるかな。chellyちゃんが歌っている中で歌い易そうにしているメロディラインというのがあって、大抵そっちの方が元のメロディラインより良いんです。
ー そうなんですか? でもryoさんはすごく柔軟ですよね。自分の作ったものが全てという感じではなく、良いと思える方向性に変更できるというのは。
ryo:そうなんですかね。まぁ聴いた時に良いと思えるまでとことん突き詰める方なので、メロディも歌詞も駄目だと思えばその場で作り直すということはよくあることなんですが、その場で書き換えたメロや歌詞をまるで10年前から知っているかのように歌ってくれるchellyちゃんの才能が本当に凄いんです。
chelly:いやいや…(照)
ryo:普通、メロディラインって一度覚えたらなかなか耳から離れないじゃないですか。それがきちんと離れられる上に、新しいメロをしっかりと乗せられる。これは口で説明するより、その場でその様子を体験してもらいたい位です。
ー いや、出来ることなら覗き見てみたいです!先ほどryoさんが教えてくださった、いのりの予言書的アルバムという意味では勿論「ギルティクラウン」の世界を知っているのといないのでは、歌詞の意味など受け取り方も変わってくると思うのですが、「雨、キミを連れて」や「この世界で見つけたもの」などは、それを度外視して、ひとつの恋愛ソングとしてもすごくトキメクものがありました。
ryo:ありがとうございます!! その二曲、実はchellyちゃんの歌は一発録りなんです。
ー え! そうなんですか?!
ryo:このデジタルの世の中、凄くないですか?!
ー 凄い!!
ryo:聴きながら半泣きです(笑)。こんな素晴らしい歌を聴かせてくれてありがとうございます!って感じです。
chelly:(笑)