ー まさに“淘汰されたくなければ、戦え”ですね（笑）（ギルティ・クラウンのキャラクター恙神涯の台詞）

ryo：今回、 chellyちゃんに一曲歌詞を書いてみないかと提案して、この曲を担当してもらいました。

chelly：いのりちゃんは音楽で気持ちを表現するというけど、何故音楽なの？となった時に、いのりちゃんはどういうアプローチをするだろうって考えたんです。一見ラブソングっぽいけど、よく観るとやはり音楽に対しての想いが、時にお茶目な発想で綴られている。そんな感じにしたかったんです。「LoveStruck」というタイトルには“恋わずらい”という意味があるんですが、音楽に対して心酔しているという、いのりちゃんらしさも出せたらと思いました。


ー 歌詞はどれ位の時間で仕上げましたか？

chelly：どの位だったかな。書き始めると止まらなくなるんです。だから…一時間位？


ー 早い！

ryo：将来的にchellyというシンガーソングライターとして出ることがあれば、これだけの武器を持っているというのは本当に強いと思います。


ー その際は、ryoさんがプロデュースで。

ryo：いや、もはや自分はいらないんじゃない？

chelly：そんなことないですよ（笑）


ー でもEGOISTとしてもそうですが、それ以上に今後を観てみたいと思わせる魅力を持っていますよね。

ryo：そういえますね。

chelly：ありがとうございます。


ー 先ほどクスッと出来るエッセンスを持つ曲としてあげられた「Ce que j'aime ～inori no kyuuzitu～」ですが、これはフランス語ですか？

ryo：はい。フランス語で、“私が愛したもの“という意味があるんですが、これは完全なネタ曲。基本はお腹が減ったということを表現しているだけ（笑）。ピアノでボサノヴァの曲のコード進行を基本に持ってきているんですが、ファミコンとかの音が出るソフトシンセを購入したので、PCエンジンの音を使ってピコピコ感を出しました。


ー あのユルさが、このアルバムの中で「手遅れ」とも違うけど、やはりポイントになっていますね。

ryo：これもchellyちゃんがあえて間の抜けたような歌い方をしたことによって、クスッと笑える要素が更に倍増して、彼女じゃないと成立しませんでした。


ー 聴いていて、ひたすら可愛い!

ryo：レコーディングの時、その場にいたみんながほんわかした感じになっていました。


ー やっぱり！

chelly：あはは。


ー じゃあchellyさんは、本当に自分の感性で歌えたという感じでしたか？

chelly：そうですね。歌詞や音の変更はありましたが、歌はありがたいことに自由に歌わせてもらいました。

ryo： chellyちゃんが歌いにくそうな譜割りというのは、自分のほうの問題として変更したりしましたが、まずはざっくり作って歌ってもらったんです。音楽ってやはり実際に聴いてみないと分からない部分ってあるんですよ。口で、「こういう音程で、理論的にはこうなっているから、それに沿って歌ってもらえればいいんだ。」とか言っても、それが音楽として面白いものかどうかというのはまた別の話になってくる。だからとりあえずchellyちゃんに歌ってもらうことで、自分が逆に提示されて「どの歌い方がいいだろう。あのテイクもいいけど、こっちのこの部分のテイクもいいな。」って悩む位でした。


ー chellyさんは歌う時に、歌詞の世界を咀嚼することをすごく大切にするからいくつも歌い方にバリエーションが出るのでしょうか。

chelly：私の中で、歌い方が二種類あるんです。ひとつは雰囲気を大切にして感覚的に歌う。もうひとつは歌詞から汲み取って考えて歌う。


ー「想いを巡らす100の事象」ではいかがですか？

chelly：この曲は感覚的に歌っていると思います。結構ストレートに歌いながらも、いのりとして「この気持ちって何なんだろう？」と困っているんです。だからそういうニュアンスも出したいと思いつつ、とにかく歌ってみようという想いが強くて、そういう感覚で歌いました。


ー “楪いのり”というキャラクターを考えながら歌うというのは大変ではないですか？

chelly：かなり頑張りました（笑）。自分が出過ぎてはいけないので、自分といのりちゃんの中間地点で歌いました。


ー アルバム全体通してみると、エレクトロな部分と生のアコースティックな部分が見事に混在していますが、全体の統一感を出す工夫はどこにありますか？

ryo：実は全く考えていませんでした。というのは僕の中で、作る人が一緒であればどれだけ振り幅の広い曲を作ってもあまり変わらないという印象があるんです。それは他のミュージシャンやプロデューサーの方々が作る曲を聴いても感じることなんですが。だからプロデューサーの方が例えば二組のアーティストを手がけた時に、勿論それぞれのキャラクターの違いはあれど、そこから得られる一定量の感情はさほど変わりはないし、大きくイメージの逸脱もない。そういう持論、音楽論があるので自分がどんな曲を作ろうが聴いてくれている人達はそんなに違和感は感じないのではないかなと思っています。それよりは、目の前にある曲をいかに良くするかという作業の積み重ねで、それを最終的にchellyちゃんがまとめているという、そこに尽きます。

chelly：ありがとうございます（照）


ー「Planetes」はWindows専用ゲーム「 ギルティクラウン ロストクリスマス」 OVA版主題歌として書き下ろしということですが、イメージの要求などありましたか？

ryo：何かありそうなものですが、何もなくて（笑）。最初のシングルまでは色々打ち合わせしていたんですが、それを気に入ってもらえたのか、それ以降は自由に作らせてもらっています。特にこのゲームはスピンオフなので本編との密接性をあまり出しすぎず俯瞰した視線で作りました。


ー supercellで作る時と、制作の思考に違いはありますか？

ryo：どうなんだろう。それ結構聞かれることがあるんですよね。例えば、「初音ミクで作る時はどういう気持ちなんですか？」とか。でも結局、その人を想像して作っているので初音ミクの場合は初音ミクというキャラクターが歌うことを考えて作るし、 chellyちゃんの場合も「chellyちゃんならきっとこう歌うだろうな」ということを想像する。だからそこに違いというものは、自分にとってはほぼないかもしれません。


ー ボーカロイドというジャンルはごく最近のものだと思うのですが、元々ryoさんの音楽のルーツはどういうところにあるんでしょうか。

ryo：昔はバンドとかやっていましたけど…。


ー 担当は？

ryo：ドラムでした。オリジナルもやりましたし、レッチリ（レッド・ホット・チリ・ペッパーズ）とかグリーン・デイ、ニルヴァーナのカヴァーもやりました。ミスクチャーも好きですけど、なんにせよ歌モノというものにあまり興味がなくて。リズムさえあればいい。なのでBOOM BOOM SATELLITESさんが大好きなんです。BOOM BOOM SATELLITESの中野さんに会わせてくれるからということでソニーに入りましたから（笑）。


ー あはは！成る程。 chellyさんは普段どういう音楽を聴くんですか？

chelly：結構色々聴きます。J-POPから始まって洋楽、アニソン、ボカロ…。最近はまた洋楽を聴き始めていて、マライヤ・キャリーさんやアヴリル・ラヴィーンさんは憧れているので、そういう有名どころを聴いて勉強しています。


ー 先ほど、ダメもとでオーディションを受けたというお話でしたが元々シンガーになりたいという希望はあったんですか？

chelly：絵だったりお芝居だったり歌だったり、表現することが好きだったので、そのどれかをお仕事に出来ればとは思っていました。

ryo：絵も、お世辞抜きにめちゃくちゃ上手いです！supercellで絵を描くメンバーに見せても驚く位。


ー おー!

ryo：しかも、まだ高校三年生だからこれだけ才能があると、可能性が無限にあるんですよね。


ー EGOISTというものを経て、今後違う場で自分を表現していきたいと考えていますか？

chelly：機会があれば是非挑戦したいと思います。


ー ボーカロイドのことも少しお伺いしたいのですが、このジャンルが、急速に音楽の世界に進出してきて、その勢いはものすごいじゃないですか。その人気の要因はどこにあると思いますか？

ryo： 極端に好き勝手なことが出来るということですかね。例えばアニメ業界ならそこでのトレンドみたいなものがあるけれど、ボカロはみんなやっていることの幅が極端でそれぞれのスタンスで相容れない違うアプローチをやっている人が同じ界隈にいる。そういうある意味の節操無さがニコニコ動画を通じてみんなで盛り上がってる感じになってるんだと思います。


ー 最後にmFound読者のみなさんに一言お願いします。

ryo：「ギルティクラウン」を観たことがある人もない人も、とりあえずこのアルバムを聴いてもらったら、セットでまた「ギルティクラウン」第一話から観てもらいたいと思います。

chelly：自分なりにこのバラエティ豊かなアルバムをひとつひとつ気持ちをまっすぐ伝える為に頑張ったので、リスナーの皆さんもまっすぐ聴いてもらえたらと思います。


ー ありがとうございました。


取材・文／まさやん


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