ー まぁ、確かにナーバスな部分ではあるよね。

いちろー：ええ。ただ、みんなが嫌なことや苦しい状況を全部含めて、楽しめていたら最悪なことにはならないと思うんです。そういうのは本当に、音楽に限らず何をやっていても大切なことですよね。仕事自体はどんなにつまらないことだとしても、そこで稼いだお金を使うのがすごく楽しみであれば、それはちゃんと還元されているからいいじゃないですか。そういう意識を総合的に持っている人であればいいんですけど、客観的に見ていて「これ、本当に楽しんでやっているのかな？」と思ってしまう人が結構いるので、そういう人達へ、問いかけたいという気持ちもありました。



ー なるほど。また、サウンド面の話でいうと、音自体は東京カランコロンらしいんだけど、少しシャープになった印象を受けました。

せんせい：今回、アレンジャーさんに入ってもらったというのはすごく大きいかもしれません。


ー 今までは一度も入ったことなかったんだっけ？

いちろー：はい。編曲も全部自分達でやっていました。大抵はライブで何度もやっている曲を、改めて録ろうというスタンスだったんですが、今回はそこも含めて違いました。


ー 第三者が入るというのは、何かしらの影響を及ぼすことかもしれないね。

いちろー：今回、それはすごく勉強になりました。

せんせい：うん、ほんと勉強になったよね。すごく何回も話し合いもしましたし、それこそ都度、終電で帰るみたいなね（笑）


ー そうなんだ！アレンジャーさんやプロデューサーという、メンバー以外の人の手が加わることで一番大きかったところはどんな部分ですか？

いちろー：第三者が入るということで、今までメンバー5人の共通感覚でアリ、ナシを区切っていたことが、何でそれがアリなのか、ナシなのかというところを改めて見つめ直さなければいけなかったんです。そこが大変だったかな。あと、プロデューサーさんは僕らのライヴを何度も観に来てくれているので、かなり把握してくれているんですが、アレンジャーさんは僕らとの接触自体が初めてで、それが逆に新鮮でした。僕らの癖や感覚を知らない分、ゼロから突っ込んでくるんですよ。「こういうアレンジってアリなの？」って言われた時に、僕らはそれが何故アリなのか考えていかないと、「だってこうした方が絶対いいのに、何でこうしないの？」って言われてしまうんですよ。


ー なるほどね！

いちろー：それが何故アリかナシか、もしくは嫌なのか考えさせられました。


ー そういう中で今回一番こだわった点はどういうところ？

いちろー：明らかに一番時間を使ったのは、コーラスのメロディです。

せんせい：あぁ、そうだね！喧嘩の一歩手前までいきましたもん。

いちろー：あははははは！そうそう!!

せんせい：「それは嫌！」とか「いやいや、こうした方がいい!!!」とか（笑）

いちろー：僕たちって、元々コード理論で曲を作っていないんです。譜面を全く使わないし、基本みんなが思ったように自由に演奏して、なんて言うか…放任主義（笑）


ー 放任主義って!!（笑）

いちろー：だから、他の人が何をやっているかプリプロやレコーディングするまで知らなかったり（笑）。でも、コーラスとなると、コードに対しての音のぶつかりが顕著に出るじゃないですか。


ー 確かに。

いちろー：でも、それすら今までは、感覚でやっていた部分があったんです。「何となくこれ、気持ちいいからこれでいいんじゃない？」って。ただ、そういうところも改めて突っ込まれてね（苦笑）。そこを折衝するのは本当に大変でした。コーラスってひとつ音が違うだけで、かなり印象が変わりますし。あと、さっき言った歌詞の話ではないですが、歌詞だけでなくメロディも、変に暑苦しかったり押し付けがましくならないように、かなり気をつけました。押し付けがましいものというのは、良い捉え方をすれば、伝えるエネルギーとしては大きいじゃないですか。


ー そうだね。

いちろー：「その方が分かりやすいしメッセージが伝わり易いじゃん！」ってなるんですが、僕たちはそれがやっぱり嫌なので、そういう感覚的な部分はメロディの作り方の話なんかも絡みながらバランスを取っていったり、本当に沢山の話し合いを重ねました。