ー “ソランジュ”とは打って変わってアップテンポで力強いサウンド。歌詞は切なくも一途な想いが綴られていますが、この歌詞は上間さんが書かれたんですね。

そうです。私、たくましい女性に憧れがあるんです。沖縄で私の周りにいる女性達はすごくたくましくて格好良いんです。曲が先に出来たんですがそれを聴いた時に、「テーマはそれだ!」と思い、気持ちと共に出てきたのが沖縄の言葉、ウチナーグチだったのでそのままウチナーグチで書きました。


ー 改めて具体的な歌詞の内容を教えていただけますか。

愛しい人を島から送り出す。 男性はそれが務めだし、  私は私の務めとして島を守り、ここで生きながら待っていますという芯を持った女性の歌です。たくましいんだけど、ちょっと意地を張っていて本音は逢いたいと思っている女心です。


ー こういう歌詞は自分の体験から生まれることも多いんですか？

今迄自分が書いた曲というのはまだ少ないんですが、生活の一部や自分が思うことを書くことは多いです。ただ特にこの曲に関しては、体験というよりも理想の方が強いです。


ー「里よ」というのは、女性が愛する男性に対して呼びかける言葉と伺いましたが、具体的に日常ではどういう使われ方をするんですか？

最近、日常ではあまり使われなくなった言葉なんです。だから「歌言葉」と解釈した方がいいかもしれません。


ー 逆に男性が愛する女性に呼びかける言葉は？

「んぞよ」で、漢字では「無蔵よ」と書きます。


ー ということは、この「里よ」と「無蔵よ」を並べた民謡もあるんですか？

男女のコンビ歌としてありますね。


ー 今後どういうアーティストになりたいですか？

ずっと歌っていきたいという気持ちは小さい頃から変わっていませんが、どんどん色々なアーティストとも一緒にやりたいですし、その中で良い音楽を沢山届けていきたいです。それに、いつか上間綾乃主催で沖縄の地元の公民館でライヴをやってみたいです。


ー 武道館とかではなくて？

そう。メインで自分の歌があるんだけど、子ども会や子どものエイサーもあったりする。


ー いいですね、そういうのも。

でしょ。沖縄の人に触れ合いながらのライヴ。でもその為には自分がきちんとアーティスト上間綾乃として独り立ちしていないと駄目じゃないですか。だから今は、周りの人に支えられながらもしっかり自分の足で立って、沖縄だけでなく全国あちこちで歌っていきたいです。


ー 最後にmFound読者のみなさんに一言お願いします。

上間綾乃を知っている人も知らない人も、この『ソランジュ』を聴いて、少しでも暖かい気持ちになってくれたら嬉しいです。テーマは「手」なので、この歌で繋がっていけたらいいなと思います。


ー ありがとうございます。


取材・TEXT／秋山昌未


関係者コメント

仮歌を取る時に初めて上間さんにお会いしました。しなやかな声と、舞う指の動きに、無風のスタジオに風が立つようでした。7才から三線を始め、まだ若いながら、彼女はこれまでの人生のほとんどを沖縄民謡と共に歩いてきました。彼女が沖縄に戻ったとき、仲間たちにけして恥ずかしい思いをしないような歌を書こうと、折りに触れて心に留め、「ソランジュ」を書き上げました。

康珍化（作詞）


去年の夏目黒で上間綾乃さんのライブを始めて拝見した私は終演後Twitterで、かつて無い程に熱く語ってしまいました。言葉足らずを承知で言うと、熱情、伝統、躍動、美しさといったものが押し寄せてきたからです。「申し子」のライブだった、とそのとき書きました。今、更にフィールドを拡げた上間さんとオーディエンスの橋渡しとして制作に携わっている事はこの上ない光栄です。

澤近泰輔（アレンジャー）


■ 上間綾乃 プロフィール

2012年のデビュー以来、日本全国にその強靭な歌声と存在感で感動を巻き起こしている、沖縄出身の唄者＝シンガー。小学2年から三線を習い始め、教師免許を取得するほどの腕前を持つ。想いを伝える「唄の力」をみなぎらせた圧倒的なステージで、東京、大阪をはじめとする全国各地でライヴ活動を展開する中、アルバム「唄者」でメジャーデビュー。全国ツアーも成功をおさめ、13年6月にはシングル「ソランジュ」の発売を控えるなど、今後ますますの活躍が期待されている。


■ 公式サイト
http://columbia.jp/uemaayano/