ー だからこの曲は、ある種のプライマル・セラピーのように感じているし、今いじめられている人にも聴いて欲しいとすごく思います。
この曲のサビで「強かに生きていこう」という部分があるんですが、本当に強かであるというのは、やりかえすことではないと思ったんです。弱い人ほど、やられればムカツクからやりかえしてやろうといった連鎖が繰り返されるわけだけど、それは戦争と同じことだし、そんなにダサいことはないと思うんです。だから、いじめた奴らがどうのこうのということではなくて、いじめた奴でさえその経験をふまえて強く生きられたらそいつの勝ちだと思うんです。いじめられたからいじめかえしてやろう、誰かを痛めつけてやろうということではなくて、それを何かしら自分なりに消化して自分を強くしてあげること、自分をタフにして笑って生きることとかにパワーをシフト出来たら良いと思うんです。まぁなかなか難しいことではあるんですが。
ー ちなみに高橋優は?
今でもつい、「暴力的なことをした方が解決するんじゃないか?」と思うことはあります。だからといって本当に暴力をふるうわけではないですけど、それ位ハラワタが煮えくり返ることがあるという意味で。
ー 分かります。
でもやはり強かに生きるとは、そういうことではないと思うんです。だからこの曲で言いたいことはすごく沢山あったんだけど、今迄これを歌っていなかったからまずは楽曲にしていくということが大切だと思ったんです。この曲のサウンド面とかメロディラインとか、色々な部分をふまえてこの曲を強かに表現していくというのもテーマになっているので、やはり聴いて欲しいです。
ー 別れることになった相手を完全にシャットアウトするようなことを歌った “スペアキー” ですが、こういうイメージの楽曲も、今迄の“高橋優”の中にはなかった気がします。
そうですね。
ー でも、この曲で言っていることはある種、リアルだと感じました。本当に愛していた時期があったからこそ、最後愛情が尽きた時にはきちんと別れをてあげることが相手への最後にあげられる最大の愛情だと。
“CANDY” もそうですが、この曲は色々な受け取り方ができる楽曲だと思うので、その受け取り方を出来るだけ邪魔したくないと思ったんです。だから実はこの曲に関してはあまりコメントしないことにしているんです。
ー そうなんだ!
そう(笑)。でも、おっしゃる通りだと思います。こういう愛の形もあると思って書きました。
ー ところで最近、タイトルにインパクトがある曲が多いですよね。
そうですか?
ー それこそ“オナニー”とか、今回のアルバムの初回限定盤特典「ボツ曲大全集①」に収録されている“足フェチ”とか。
確かに(笑)。
ー “蝉” という曲も、どうせ生きるなら後悔しないようにということを「蝉」という存在をモチーフに歌っていてタイトルセンスも面白いと思いました。
みんな大体70歳、80歳位まで生きると思っているじゃないですか。
ー そうですね。
すごく不吉なことを言うようだけど、そうとは限らないと思うんです。今のこのご時世を肯定的に言うなら、保険というものが主流じゃないですか。老後のために保険をかけるって。でも僕、自分の老後にあまり興味がないんですよ。
ー そうなんだ。
そこまで生きていられるかということも考えたことはないし。どちらかというと「今」に全力を注ぐことに必死だから。やりたいことは出来るだけやれるうちにやっておきたいという気持ちの方が強いんです。だから「今は幸せじゃないけど老後は幸せになれるはず」という考え方もあまり好きではないんです。
ー 確かに実際、その「老後」が来るか分からないしね。
そう!しかも老後になったら腰が痛くなっちゃってあんまり楽しめないかもしれないじゃないですか(笑)。それに、「自分は今幸せじゃないけど、老後はいつか幸せになるんだ!」なんて言ったら、今いる家族や友達、一緒に仕事をしてくれている人達に失礼じゃないですか。僕は人生の中で今が最高だと思っているんです。ここ何年かはずっとそう思っているんですが、今が最高だから歌うし、「もう辞めまーす」みたいなことも言わない、絶対に。だから嫌な話かもしれませんが、もし今、命が尽きたっていいと思える1日を毎日過ごしたいんです。それを僕は誰かに押し付けてはいけない考え方だとは分かっているんですけど。
ー でもそれはとても大切なことだと思います。
蝉って問答無用で1週間しか外で生きられないけど、彼らはきっとそんな事実だって知らないで、ずっと木にはりついて鳴いている。でも僕の周りで蝉を嫌っている人が沢山いるんです。なんかある意味自分もそれにすごく近いものを感じるというか。
ー というと?
もしかしたらある一方では自分もすごく憎まれているのかもしれない、日々僕のことを嫌っている人がいるのかもしれない。だとしたら、コンプレックスや自分が嫌われている原因を探ることというのは何なんだろうと考えたんです。でもそれは結局時間の無駄だと。だって蝉は整形手術なんて出来ないじゃないですか。蝉は永遠に蝉でしかないわけで、僕は永遠に僕でしかない。それならその自分がいかに自分らしく在るか、自分の人生を真っ当に生きるかすごく大切な気がしたんです。それでこの曲を作りました。
ー “泣ぐ子はいねが”ですが、本能的な意味ではこの曲が一番好きです。
そうですか!
ー この激しいロックサウンドと秋田名物のオンパレードを融合させようと思った理由は?
先ほどの話の延長になりますが、僕の人生の中で自分が秋田出身だということはずっと変わらないし、僕は地元が大好きなんです。大好きだからこそ「高齢化率ナンバー1」という問題もひっかかるし歌詞には書ききれなかった問題点も、もっともっとあったんです。だからそういう問題点もひっくるめて地元ソングというのがあってもいいなと思ったので作りました。ただこの曲はプリプロをあまりしていないんです。
ー 珍しいですね。
ええ。セッションでいいかなと。
3rdフルアルバム
『BREAK MY SILENCE』
2013年7月10日発売
1 ジェネレーションY
2 (Where's)THE SILENT MAJORITY?
3 陽はまた昇る
4 人見知りベイベー
5 空気
6 CANDY
7 スペアキー
8 蝉
9 泣ぐ子はいねが
10 同じ空の下
11 涙の温度
初回限定盤(2CD)
WPCL-11519 \3,570(税込)
『ボツ曲大全集①』(CD)
1 傍観悲観者
2 足フェチ
3 ブランク
4 テレビを見ながら
通常盤(CD)
WPCL-11521 ¥3,150(税込)
*初回プレス盤(初回限定盤・通常盤共通)のみ:封入特典あり
高橋優2013全国ホールツアー【BREAK OUR SILENCE】
7月27日(土)福岡国際会議場メインホール
8月11日(日)秋田市文化会館
8月17日(土)渋谷公会堂
8月18日(日)渋谷公会堂
8月24日(土)オリックス劇場
8月25日(日)オリックス劇場
8月30日(金)札幌市教育文化会館
9月21日(土)仙台市民会館
9月23日(月・祝)いわきアリオス中劇場
9月27日(金)広島アステールプラザ大ホール
9月29日(日)愛知県芸術劇場大ホール