結成15周年のCOILが約8年ぶりにリリースするオリジナルアルバム『15』。幻のデビュー曲といわれた “ボンデージ・スーパーカー”をはじめ、COILが積み重ねてきた今だからこそ表現できる15の楽曲たち。そんな『15』の楽曲話の他に、岡本定義が考える佐藤洋介を、ちょっと音楽とは脱線した例えで爆笑も含め色々語ってもらった。
ー 15周年おめでとうございます!
岡本・佐藤:ありがとうございます!
ー お二人でサシ飲みしたらしいですね。
岡本:ええ、マスタリングの後に。どうやって売っていこうかとか、良い作品が出来たねとか、あとは実家の悩み相談とか(笑)。
佐藤:真剣な話をね(笑)。
ー 昨年は『カセットミュージック』や『マスターピース~COIL傑作集~』『セカンド・ベスト~COIL佳作集~』など企画盤目白押しでしたが、今作『15』は久しぶりの新録フルアルバム。手応えはいかがですか?
佐藤:毎回そうですが、今回も「良いもの作った!」という手応えは感じています。
岡本:一昨年、ウォーミングアップ的に録って出した三部作(『ソラチネ』『ボサノバ』『カフェラテ』)もあったので、アルバムとしてはもう少し磨きをかけたものを出したいと思っていました。フルアルバムとしては約8年ぶりなので久しぶり感はあるけれど、折角の15周年ですし良い作品を作りたかった。勿論、洋介も言ったように毎回良いものは作っているつもりですが、特に今回は違う気がします。とは言え、キッチキチに設計図を書いて、こういうコンセプトでこういう曲順で…という感じにしてしまうと、逆に行き詰まってしまう気がしたので、フワッとしました。
ー フワッとですか。
岡本:フワッとしながらユルユルしていたら、スタッフに「このままいくと間に合いませんよ!」と言われて、そこから2ヶ月位休みなし!(笑)
ー えー!
岡本:まぁそういうこともあり、大変でしたが以前ほど曲順は迷わなくなったし、大丈夫そうだという見極めが早い段階で分かるようになりました。「大丈夫かな。これ、何か足りないような気がするんだけど。」ってずっと思ってはいるけれど、ある瞬間これで大丈夫だと思える瞬間が来るんです。多分、僕の知らないところで洋介が色々なことをやっているんじゃないかな。人知れず、音を上げてみたり消してみたり。
佐藤:(笑)
岡本:何ヶ月か前に、ずっと「この曲、大丈夫かな。」と思っていた曲が1曲あったんですが…。
ー どの曲ですか?
岡本:言わない!
ー えー!!!
<一同爆笑>
(※取材終了後、“CASANOVA”であることを教えていただきました。)
岡本:でも最終的にその曲を基準にすれば大丈夫だと思えるようになったんです。昔はアナログ作業だから、1曲作り終わってから次の曲という作り方しか出来なかったんです。メモリの位置の問題とかがあるから。その後、コンピューターを導入するようになってからは何曲かの同時作業が可能になったけど、僕はやはり完成した作品がないと何となく不安なんです。軸がないとバランスがとれているか分からなくて。全部がヨチヨチ歩きというか、どう育つか分からない状況でまとめていくのが最初はすごく不安だったんだけど、これで大丈夫だと思えるものがひとつあると、他の作品も急に良くなってくるんです。
ー 佐藤さんは実際、岡本さんの知らないところでかなり調整を重ねたんですか。
佐藤:そうですね。それをやらないと音楽にならないので(笑)。その当時当時でやってきた録音があるので、初期と現在ではサウンドも全然変わっています。やっていることの芯は通っているんですが、サウンド面や楽曲に対してはモードがあるんです。例えば、オルタネイティブな曲や、もう少し柔らかいアプローチをした曲など。それに毎回自分の中で、今迄やったことのないことを取り入れたりもします。勿論うまくいくか悩んだりもしますが、きっとうまくいくはずだ!という感覚で取り組む(笑)。
ー そうでないと出来ないですよね。
佐藤:そうそう!(笑)だからいつものCOILサウンドは、バン!と張り出すような音を入れていくんですが、今回は年齢も年齢ですし(笑)、大人なサウンドというものを目指してみようかなと。音圧などもあまり気にしない。でも疲れずにきちんと聴こえて、しかもロック的バランスが取れれば良いなと思いました。経験上、早い段階で音を作りこむと逆に歌が入れづらいということに気付くので、そういうことを考慮して先に歌を入れてもらい、その後に僕が音を固めていく作業をして、そこから段々と構築をしていく。だから結構居残り作業が多かったです(笑)。
岡本:僕が「先に帰るよ。」と言った後に、ちょっと買い物をして戻るとまだやっていたことはかなりありましたね。
佐藤:やはり2チャンネルから出てくる音というのは、ボリュームがすごく大切になってくるんです。大きさがね。そこを綿密にやらないと自然に聴こえなくて。実は自然にやっているように聴こえるけど、細かく決められている。そうでないと出っ張りやヘコみがやたらに目立って気持ち悪くなってしまうから、ひたすら整える!!それでそこから最終的にはエフェクティブなものを加えていくんです。
岡本:常にノンアルコールビールを飲みながら(笑)。
ー ノンアルコールビールですか(笑)。
佐藤:本当はビールを飲みたいんですけど(笑)。ノンアルコールビール、すごい消費したな、この夏。
岡本:すごい飲んでたよね。
佐藤:半端なくね。でも3本目位になってくると酔っぱらってる気分になってくるのが不思議だったな。まぁ本当のビールだとオートメーションも「こんなもんでいいんじゃないかな?」って、いい加減になってきちゃうから。それで次の日に聴いたらびっくりしちゃう(笑)。
ー じゃあCOILさんがアルバム制作をされている時にはノンアルコールビールを差し入れします(笑)。
佐藤:それが途中からケータリングに混ざってくるようになってんですよ!
ー おー!!
佐藤:最初は缶コーヒーとかだったんですが、そのうち2本位ノンアルコールビールが加えられました(笑)。でも気分だけでもリラックスしてやるのは大切です。
岡本:そうだね。先ほども言いましたが、アルバムのコンセプトをあまりキチキチにせず余裕を持たせることにも繋がってくると思います。昔はコンセプトも音圧も計画もガッシガシに決めていたんですが、今回色々な面で余裕を持たせたことが良い方向に出たんじゃないかな。ちょっと細かい話だけど、マスタリングの時にデジタルとアナログ変換をするコンバーターという機械が2種類位あって、微妙な差しか出ないけどそれを使って最後の音決めをするんです。いつもはロックっぽい音がする方を通していたんですが、今回はクラシックやポップスに適した方を使ったんです。どちらかというと聴き易い、でも下手するとサラッとしてしまうという特性を持っています。