ー そう思います。ところで、“チョコレート・シティ”はこのアルバムの中でも異色な印象を受けました。テクノポップでありファンクである。でもパーカッションの音は大地的要素があるし、歪んだギターは完全にロック。これだけ要素の違うものがどうしてこんなにきちんとハマるのかなと不思議でした。
佐藤:基本はP-Funk。
ー あー!
佐藤:僕は兄がいたので中学の頃から早めのPファンクデビューしていたんです(笑)。兄貴がちょうどその頃ブラコンとかファンクが好きで、いつも家で曲を流していて僕もカッコいいなと思い、HIPHOPを生み出したグランドマスター・フラッシュとかも含め聴いていました。だから絶対身体に沁み込んでいるんです。
ー いいですね。
佐藤:以前のアルバムやカップリングでP-Funkっぽい曲はあったんですが、今回はもう少し進めた感じにしたかった。でもやっているうちに色々な要素が欲しくなってきて。「エレキは歪ませてソロの部分はプリンスだな。」とか(笑)。アナログの時代はピッチシフトを使った「帰ってきたヨッパライ」(ザ・フォーク・クルセダーズ)みたいな高い声が入っているものも多いんですが、そういう要素も色々入れていったらゴチャまぜになっちゃった(笑)。
岡本:昭和歌謡も入ってるし(笑)。
佐藤:そうそう(笑)。昭和歌謡はすごくファンクやソウルに影響されていた時期もあったので、ベースラインなんてモロそうだし。だからサビはゴダイゴの『モンキーマジック』みたいにダララララララって上がる感じを入れて、自分の中の遊び心を沢山詰め込んでみました。
岡本:歌詞のコンセプトは馬鹿とエロと宇宙!
佐藤:P-Funkってライヴ会場にマザーシップから登場して歌い出すという、ちょっとお馬鹿なところがあるけれど、みんなそれを楽んでいるんです。
ー「馬鹿」ではなく「お馬鹿」ですね!
佐藤:そう!それが音楽に繋がっている感がカッコいいんです。そういうのを入れたいと思いました。
ー アルバムの中盤位にこういう曲が入っているのがフックとして効いていますね。
岡本:中盤でこういう変なことをしながら盛り上げるけど、盛り上げたまま終わらないアルバム。
ー そうなんですよね!
岡本:大人でしょ(笑)。
ー はい! 個人的には “ノスタルジア”から “移動遊園地”の流れが、ある種ショートムービーのようなスモーキーな映像が浮かんできて好きです。
岡本:すごく映像的だよね。この2曲は。
ー 最後の “回想”は、こういっては何ですが、歌詞と呼んで良いのかと思うほど歌詞が短いですよね。
岡本:俳句?って感じ。最初の部分なんて歌詞だけ読むとAKB48かと思うよね。「I want you〜♪」って。
<一同爆笑>
ー 曲のテンションは上がらず終わる。レコードの針を落とす音も含めて詩的な終わり方が素敵です。
岡本:実はこれ偶然なんです。
ー え、そうなんですか?!
岡本:最初は14曲だったんですが、スタッフに「あと1曲あったら15曲になるから1年1曲でいいですね。」って言われて「くそー!!!」と思って。
<一同爆笑>
岡本:ただ、あまり気合いを入れるのもどうかと思ったんです。だから音も少し懐かしい感じでラジオヴォイスやレコードノイズとか色々試してみました。
佐藤:細かい話になってしまいますが、サンプリングで針を落とす音と、ガーッと流れる音があるので、それを繋ぎ合わせてエフェクターで調整をするんです。EPっぽい音とかLPっぽい音とか。
岡本:曲ももう少し長かったんだよね。それをあえて短くして刹那的な切なさを出しました。あとタイトルも最初は違うものでしたが、レコードの針を落とす音から、レコードはクルクル回るという連想で “回想”というタイトルになったんです。
ー そうだったんですか。クリアすぎない音はいいですね。
佐藤: いつもは僕がこっそり手直ししたものをCDに焼いてサダに渡すんです。でも今回 “回想”に対しては、音の広がりがあるパターンもすでにMixしてあったので、それと並べてレコードっぽい音のバージョンも入れておいて、チョイスしてもらいました。
岡本:今日、若い子達はアナログレコードがどんな音か分からないかもしれないけれど、何となくイメージ的に針の音やこういう質感に懐かしさを感じるじゃないかという淡い期待もあります(笑)。
佐藤:僕的には14曲でライヴが終わって、DJさんがこの曲をかけて終わるというイメージ。
ー 最後にmFound読者のみなさんへ一言お願いします。
岡本:自分で言うのは何ですが、良い作品が出来たと思いますので是非是非聴いて下さい! インタビューの面白さとは違う面白さや情報を感じて欲しいです。歌詞は短いけれど、聴いてみたらイメージが広がったり映像が浮かんだり。聴いてくれた人がそういうイメージを膨らませる余白も作っているつもりですので、聴いてみて沢山イメージを膨らませて下さい。
佐藤:音楽はやはり最終的には聴かないと分からないので、興味を持ってくださったら是非聴いて下さい。友達に貸してもいいですし、とにかく広く聴いてもらうというのが一番良いと思います。僕らは15年もCOILとして活動をしていますので、アルバムごとに良い楽曲をリリースしているという自負もあります。だから今作『15』だけでなく、今迄リリースした作品たちも含めて僕たちの音楽遍歴も是非聴いてもらいたいですし、その中で自分が好きだと思える楽曲を1つでも見つけてもらえたら嬉しいです。
ー ありがとうございました。
取材・文/秋山昌未
■ COIL公式ウェブサイト
http://www.office-augusta.com/coil/