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ドレスコーズ『バンド・デシネ』インタビュー


ー そのテーマがあった上で、ゴッホをキーワードに持ってきたのは何故?

友達との雑談で、この歌詞に繋がるような話をしている時に僕が「ゴッホじゃやだから。」って言ったんです。それが自分でも面白いと思って携帯にメモしておいたのが元です。


ー「ゴッホじゃやだから。」というのは、ゴッホのようにいくら名声を掴んでも死んでからでは意味がないということ?

もうちょっと言うと、芸術の為だけに死ねるかという話。これは反語ですけどね。芸術には一生を捧げたり棒に振るくらいの価値はあるけれど、ゴッホは自分の絵画、自分の芸術の完成を夢見て一生をそこに全部つぎ込んだのに、結局間に合わなかった。あれを寿命とするならね。本当はすごいところまでいっていたけれど本人はそうは思わず、ずっと続けて一生をかけた。芸術とはそれでも届かない位に大きなものだけど、音楽もそうだと思うんです。これは僕がよく話すことだけど、例えばタワーレコード渋谷店にあるCDの在庫を全部連続再生していったらどれ位の時間なんだろうって。


ー 計り知れないね。

もしかしたら一生分くらいあるかも。だから僕らは一生ずっと音楽だけを聴き続けていても、聴ききれなくて死ぬんだろうな。今だって増え続けているわけですからね。


ー 廃盤は別として、減ることはなく増える一方だからね。

そうそう(笑)。ということは、世の中の良いことなんて全然味合わないまま死んでいくということになる。僕は音楽に全てをかけているわけですが、人間の一生をそんなものの為に潰されてたまるかとも思うんです。だって、自分の一生よりも更に大きな芸術があって、でも人生というのはそれよりももっと大きなものだから。結局時間がないだけ。僕らはそんな芸術すらも一部分でしかない位の広大な世界に生きている。そしたら全部味合いたいと思うんです。感情の全部を味わう。例えば欲しいものがあったら片っ端から手に入れてすぐ飽きて。そうじゃないと時間がないから。そうやって全部やって全部飽きて死にたい。


ー 飽きたがないと意味がないし、そういう死に方は理想だな。

ね!それ位に世界は豊潤だから、絵だけ観ていても間に合わないし音楽だけ聴いていても時間はない。だから「僕はゴッホじゃやなんだ。」というのはそういう意味を持っているんです。


ー なるほど。サウンドの話をすると、冒頭のトーキングスタイルで始まる部分ですぐに惹き込まれました。菅さんのドラムのリズムとオン・ビートとオフ・ビートと上手く絡み合っていて。

ドレスコーズを結成してから初めて、歌詞と構成が決まっている状態で持っていったんです。


ー いつもは?

いつもはメロディだけしか持っていかないし、構成も後から全部決めるんです。曲の長さやアレンジをみんなで決めて、そこから歌詞を書いていく。それ位どうなるか分からないんです。僕らの曲作りは。


ー なるほど。

でもこの曲は初めてヘッドアレンジというか、構成やアレンジのイメージ、Bメロ、サビ、間奏は全部出来ていて、Aメロを全てバンドに預けようと思ったんです。それならメロディはなくていいやと。そこでメロディのない曲というのがイメージの中で出来てきて、「ここで僕が言葉を羅列するので、ドラムはそれに対してビートを刻むという感じではなくすごく複雑なパターンで僕の言葉に拮抗するイメージでお願いします。」って菅さんに伝えました。それで菅さんが僕の「少年マンガ原理主義にのっとって」という部分を全部音譜におこすんです。


ーえー!!!

それをそのまま叩く。(ドラムを叩くジェスチャーをしながら)ツツッタータツッツターって。すごい面白かったしなるほどって思いました。僕は…何ていうんだろう、やってやられてみたいなことをイメージしていたんだけど、菅さんは全て並走のユニゾンを持ってきた。それはそれで良かったし、その上ギターとベースはもはや弾かないっていう参加方法でね(笑)。


ー 素晴らしい!

音を入れれば入れる程、普通になっちゃうんです。だから「最初は志磨くんだけで始まれば?」ってメンバーにいわれて。でもそんな予定じゃなかったから「えーーー!!! これ一人でやるの?」って。


ー あはは!

「でもそれはみんなビックリするよ。」と言われたから半分一人でやって、残りの半分から菅さんが入ってもらってBメロ以降からやっとベースとギターが入る構成にしたんです。


ー 確かにビックリしました。それに今迄のドレスコーズの作品はメンバー全員の音がほぼ全てに入っていることが多かったのに対して、この曲を含む今作では結構音が抜けているとかリズムが飛んでいるという、今迄にはないアレンジが多いと思っていたんです。ドレスコーズの進化系というか。

あー、そっか。なるほどね。


ー もしかしたらそれこそ寺井さんのお話ではないけど、今迄メンバーに見せていなかった志磨遼平を出しているのかとも思うし、メンバー各々がドレスコーズというバンドに根付いてきているようにも感じました。

ドレスコーズの4人が集まった時に出る音というのは確かに出来上がってきました。


ー ところで、歌詞にある「C28のM73 Y18でKが14」というのは、もしかしてカラーパーセントのこと?

そうです。もしかして色作ってみました?


ー 作った、作った! でも微妙なエンジ色というか小豆色というか…(笑)

そうそう(笑)。歌詞を殆ど推敲(すいこう)しなかったんです。僕はいつも何日もかけてめちゃくちゃ書き直しをするんですが、この曲に関してはそれをやっては駄目だと思って。それで頭からずっと書いていき「お金じゃないとか言うな、お金って愛の数値化だ」の次にくる言葉は何かなと、ある種連想ゲームみたいな感覚で次の言葉を考えたんです。


ー なるほど。

愛って目に見えないものじゃないですか。


ー ええ。

音楽も同じで、その音楽がどれ位良いか数値化しろと言われた時に、売れた枚数やライヴの動員数で数値化するしかない。勿論僕はそういうことを否定するつもりはないし、むしろ大肯定派ですよ(笑)。でも目に見えないものを数値化すると考えた時に、ふとCMYKが浮かんで来て。僕、CMYKって面白いなといつも思っていたんですよ。


ー へー。

(目の前のスティックシュガーを取って)例えば今僕らがこれを観た時に、一応共通言語としてはオレンジ色になるじゃないですか。でも人の視覚は少しずつ違うし、もしかしたら僕はこれがブルーに見えているのに、みんなの言うところのブルーをオレンジと言っているかもしれない。


 

リリース情報

ドレスコーズ2nd アルバム
「バンド・デシネ」
2013年11月6日発売


収録曲
M-1:ゴッホ
M-2:どろぼう
M-3:Zombie(Original Ver.)
M-4:ハーベスト
M-5:トートロジー
M-6:シネマ・シネマ・シネマ
M-7:Silly song, Million lights
M-8:Eureka
M-9:(She gets)the coat.
M-10:Teddy Boy
M-11:We are
M-12:バンド・デシネ
 
Disc2 DVD(初回生産限定盤)
1  誰も知らない
2  TANGO, JAJ
3  Puritan Dub
4  ストレンジピクチャー
5  レモンツリー
6  Automatic Punk
7  ベルエポックマン
8  Trash
Live at 日本青年館(2013.3.8)

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初回生産限定盤
COZP-808~9 / ¥3,465(税込)
初回盤DVD:Live at 日本青年館(2013.3.8)

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通常盤
COCP-38213 / ¥2,940(税込)

LIVE情報

More Pricks Than Kicks TOUR

11/21(木)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
11/22(金)仙台JUNK BOX
11/24(日)札幌cube garden
11/27(水)名古屋QUATTRO
11/28(木)高松DIME
11/30(土)福岡DRUM LOGOS
12/01(日)広島ナミキジャンクション
12/03(火)梅田AKASO
12/07(土)SHIBUYA-AX

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