twitter twitter
ドレスコーズ『バンド・デシネ』インタビュー


ー でも先ほどの見え方の話ではないけど、人の聴こえ方や琴線によってはその可哀想な子の方が好きと言う人もいるだろうから、聴き比べしたら楽しいかも。それに仮MIXなんてなかなかファンの人は聴けないからある意味貴重だし。

確かにそうですね。仮MIXの方は全体的に重心が低くてダークな印象だけど、本来もっと淡々とライトな仕上がりにしたかった。あまり感情的ではない感じが良くて。乾燥している感じ。


ー “シネマ・シネマ・シネマ”では「シネマじゃなくて リアル」という歌詞が出てくるけど、志磨くんのフィルターを通したドレスコーズのことを歌ってるのかなと感じました。

ツアーを回っている時かな。自分の中で次のテーマみたいなものが、霧がかっているというか霞の中にちょっとだけ見えてきたことがあったんです。多分30代になってのテーマなんでしょうね。 僕、すごいロマンチストなんですけど20代はロマン主義で良いんです。でもロマン主義の次に来るものって何だろうと考えた時に、それをきちんと掴んで言語化したいと思ったんです。次のアルバム、つまり今作で。でも「ロマン主義ではなくもっとリアリズム的なものを書きたいかなぁ??」という位だった。だから久しぶりにニーチェとか読んでみたりして。


ー うぉぉ。志磨くんらしい。

そういうものにかぶれてみながら書いたので「さよなら ロマンチック」からこの曲は始まるわけです。さよなら ロマンチック。こんにちは リアリズムという感じ。でも書けば書くほど、どんどんロマンチックになっていく!(笑)。多分、「シネマじゃなくてリアル」と書いてしまったがためにシネマというのがテーマになってきて、映画と現実の自分の対比になる。で、映画の比重がどんどん増えていって「用意/アクション」や「 カメラが回り出す」なんて歌詞が出て来る。


ー しかもフレッド・アステアまで出てくるし(笑)。

そうそうそうそう!もうどんどんロマンチックになってきちゃって「すべてのキャストの名前を刻むよ」なんて言い出す始末(笑)。


ー そう!だからこの部分で感じたのが、インディーズ時代から毛皮のマリーズの解散を口にしていたこと。もしかしてドレスコーズでもすでにそんなことを考えているのかなって逆にこちらもロマンチックな思考に飲まれてしまった!

あはははははは!!!!!!


ー しかもそこからの“Silly Song, Million Lights”の流れが余計ロマンチックにさせる!

いいでしょ、この流れ!


ー いい!「おかしな声 へたくそなギターそれと あと、いくつかの」

(言葉を重ねるように)「… あと、いくつかの Silly Song, Million Lights!」


ー それそれ!それこそ志磨くんが夜、青山通りを歩くシーンとかがモノクロで頭に浮かんできた。

なるほど。確かに毛皮のマリーズって本当にいつやめてもいいと思っていたんです。だからすごく好きだった。うまく言えないけど。僕は、生きている中での処世術として距離を置いてしまうんです。いつなくなっても大丈夫なようにって。きっとそれが僕の、人や物への関わり方なんでしょうね。でも僕はドレスコーズをすごく大切にしようと思ったんです。メンバーと家族みたいに仲良くなって一生このバンドをやっていこう。勿論メンバーを愛しているし、ゆっくりゆっくりやっていけばいいのかなって。でもそれがいつしか誰かに決められたことみたいな気がしてきて。バンド=続くものとして頑張るべきみたいな。


ー ひとつの定義みたいな?

そう。そういう考えが自分の中で違和感となって、これは僕の処世術ではないというか、僕のやり方ではないと気がついたんです。だから急に懐疑的なことや刹那的なことを言い出した。


ー なるほど。

でも今は「もういいやん、ドレスコーズがなくなっても。」と思っています。勿論これも反語ですが。そうでないとドラマが生まれないし、大切にしすぎていたら駄目だなと。傷つきたくないとか失いたくないとか自分に何事も起こらないようにと思えば家から出ないのが一番ですから。そうやって部屋に引きこもって終える人生を、バンドとして置き換えて考えたら「そんなのご免だね!」って思ったんです。続けるためだけにやるバンドなんていらない。そう思えたから、きっとこれからのドレスコーズに色々なドラマが生まれると思います。


ー 絶対生まれるね。ここでまた曲の話になるけど、“Eureka”はサウンドも歌詞も面白いね。

これは丸山と治雄のコンビが作ったんです。


ー そうなんだ!歌詞も?

いや、歌詞は僕です。歌詞とメロディは僕が作りました。


ー 歌詞に関しては、好きなものや語感の良い言葉を並べた志磨文学ワールドに溢れているし、サウンドではベースのイントロからポップなギターリフが印象的だけど、ホワイトノイズが小さく流れていたり、最後の最後で全く違うサウンドフレーズが出て来るよね。

そこは僕です。ホワイトノイズとは別に、ジェット機が上昇するようなノイズが最後にくるじゃないですか。


ー はい。

僕、飛行機って大の苦手で。何が嫌かというと途中でエアポケットに入ったように気圧が変わる時ってあるじゃないですか。


ー はいはい(笑)。

あの感覚がもの凄く嫌いで。でも音楽でそれをやってみたくなって。


ー 嫌いなのに?(笑)

そうそう。ギーーンって上昇しながら一瞬落ちる感じ。あれをすごくやりたくて、みんなに「ねぇ、やろうやろう!」って言ったらみんなにすっごく嫌がられて。


ー あははは!

「リフとかも訳わからないんだけど。」って言われて僕が必死に口で説明するの。すごくアホっぽいリズムでチャカポンポン チャカポンポン♪みたいなのやりたいっていったら、みんな嫌々やってくれたんだけど、「この曲いらないよね。」みたいな雰囲気になって僕が必死に懇願しました(笑)。


ー そうなんだ。私、個人的にすごく好きだけどな。

良かった(笑)。


ー タイトルトラックの“バンド・デシネ” は、ロックがあり愛がありという感じが、それこそ志磨くんも好きな岡崎京子さんの世界を感じました。

あ、なるほど。僕は何となく80年代のジュリー(沢田研二)のイメージだったんです。「弾倉にルージュを、引き金にバラードを!」とか。


ー なるほど!

リップスティックと鉄砲の玉の形状が似ているなと思いついて、これを上手く書けないかなと色々書き方を考えたんですけど、岡崎さん流に言えば「くちびるから散弾銃」ですよね。


ー そうそう。

その感じが面白いと思って。で、パロールというのは「意味のないおしゃべり」ということなんだけど、意味のないおしゃべりで時間を潰すような歌詞にしたいと思ったんです。でも確かにそう考えると岡崎さんっぽいな。ただこの曲は歌詞を随分変えているんです。


ー そうなんだ。

最初にイメージしたのはジュリーの“OH!ギャル”。女性讃歌みたいなものにしたかったんだけど、途中で「バンドデシネ」という言葉が出て来たことで歌詞も全く変えたんです。


ー なるほど。では最後にmFound読者のみなさんに一言お願いします。

僕らの傑作が出来ました。あとライヴに来て下さい。カッコいいから。


ー ありがとうございます。


取材・文/秋山昌未


■ ドレスコーズ公式サイト
http://the.dresscod.es/top.html


 

リリース情報

ドレスコーズ2nd アルバム
「バンド・デシネ」
2013年11月6日発売


収録曲
M-1:ゴッホ
M-2:どろぼう
M-3:Zombie(Original Ver.)
M-4:ハーベスト
M-5:トートロジー
M-6:シネマ・シネマ・シネマ
M-7:Silly song, Million lights
M-8:Eureka
M-9:(She gets)the coat.
M-10:Teddy Boy
M-11:We are
M-12:バンド・デシネ
 
Disc2 DVD(初回生産限定盤)
1  誰も知らない
2  TANGO, JAJ
3  Puritan Dub
4  ストレンジピクチャー
5  レモンツリー
6  Automatic Punk
7  ベルエポックマン
8  Trash
Live at 日本青年館(2013.3.8)

shokai20131003191903.jpg
初回生産限定盤
COZP-808~9 / ¥3,465(税込)
初回盤DVD:Live at 日本青年館(2013.3.8)

tujo20131003191958.jpg
通常盤
COCP-38213 / ¥2,940(税込)

LIVE情報

More Pricks Than Kicks TOUR

11/21(木)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
11/22(金)仙台JUNK BOX
11/24(日)札幌cube garden
11/27(水)名古屋QUATTRO
11/28(木)高松DIME
11/30(土)福岡DRUM LOGOS
12/01(日)広島ナミキジャンクション
12/03(火)梅田AKASO
12/07(土)SHIBUYA-AX

Interview

Live Report

Blog

ページの先頭へ

ホーム | プレスリリース | プライバシーポリシー | 広告に関しまして | お問い合わせ

  • facebook
  • ツイッター