flumpool史上、最大最長のツアーであった3月から9月までのワンマンライブツアー「flumpool 5th tour 2012『Because... I am』」は実に全国42ヶ所52公演に及んだ。そのツアーで多くの経験をしたメンバーは12月12日、約2年ぶりにNew Album『experience』をリリース。今作にも収録されているシングル曲、“Answer”や“どんな未来にも愛はある”、”Touch”などをはじめとする彼らの曲はCMやドラマを通じて耳にすることも多いと思うが、では彼らが発したいメッセージは何だろうか？それを聞いた時にメンバーから出てくるのは「ライブ」であった。ライブを何より大切にする彼らは、テーマでもある「今を伝える」というメッセージを、 今回のアルバム『experience』に込めている。経験を意味する“experience”。それはflumpoolが経験してきた2年間、そして震災を経て大勢の人達が経験してきた2年間が詰まった作品となった。今回、そんな『experience』の楽曲の話と共に、ライブを通じて出て来た想いや、今何が必要かと感じていることをメンバーに伺ってみた。


ー 初めまして！宜しくお願いいたします!

メンバー：宜しくお願いします!!


ー 少しさかのぼりますが、 TBS系木曜ドラマ9『レジデント～5人の研修医』 の主題歌にもなったシングル『Answer』（11月7日リリース）の疾走感と力強さは、凄くかっこ良いですし、一度聴いたら忘れないですね。

山村：ありがとうございます！


ー この曲はツアー＜flumpool 5th tour 2012『Because... I am』＞中に制作したと伺いましたが。

山村：はい、そうです。

阪井：『Answer』の前にリリースしたシングル 『Because... I am』（2012年7月リリース）を連れ立ってツアーを回ったんですが、そのツアーで色々と感じたことがあったので、“Because... I am”の延長線上で、もう一度力強く意思のある曲が作ってみたいと思い、作り始めました。


ー この曲はドラマ主題歌の為に書き下ろしたんですよね。

山村： はい。

阪井： 今、自分が作ろうとしているものと、ドラマの関係者サイドからいただいたイメージがリンクしていたんです。前作とは違い、アッパーでありながらドラマチックでもある。良い形でみなさんに届けることが出来たと思います。


ー 今お話にあったツアー＜flumpool 5th tour 2012『Because... I am』＞というのは全国42ヶ所52公演！

山村：バンドとしても最大最長で、10万人以上の方と巡り合ったツアーでした!


ー 約2年ぶりのフルアルバム『experience』を12月12日にリリースされますが、この中に収録されている曲もツアー中に書いたのですか？

山村：全部ではありませんが、ほぼツアー中に仕上げました。


ー ライブのモチベーションと制作のモチベーションでは質が違うと思うのですが…。

山村： どうだろうな。


ー そういう部分はあまり感じなかったですか？

山村：まぁ、場合にもよると思うんだけど、今回は曲作りの為の制作自体がライブ寄りだったかもしれません。レコーディングでもライブ感というのがすごく大切だと実感しました。


ー レコーディングでのライブ感というのは、具体的にはどういうことでしょうか。

山村： ライブは一度きりだし、時間も限られている。その日にしか出来ないことを突き詰めていくのがライブだと思うんです。でもレコーディングは次の日や、また別の日にも録れますよね。


ー ええ。

山村：だけど、やっぱりその日にしか出来ない表現というものがある気がするんです。「一年後ならもっと上手く歌えるのにな。」ではなく、今の自分で全てを表現することに、上手い下手を越えた良さを感じてもらえるのではないかな。


ー なるほど。

山村：例えるならThe BeatlesでJohn Lennonが歌う"Twist And Shout"のヴォーカリゼーションとか。僕はあそこに魂を感じたりするので、そういう意味でもライブ感というのは今回のツアー中に作ってみてすごく大切だと感じました。


ー ということは、アルバム全体のコンセプトとしてもライブ感というのはキーワードにいますか？

山村：そうですね。ライブの時はいつも、目の前の人が明日も会えるとは思わないでやっているんですが、常にその日が初日であり最終日であるという気持ちが特に今回のツアーは強かったです。


ー 体験や経験という意味を持つ『experience』というタイトルにも気持ちが込められていますね。

山村：ライブは僕らのバンドの原点でもありますし、約2年ぶりのアルバムということで、それを一番表現出来るのもライブだと思っています。日常で色々な人たちと会うけど、やはりライブで自分達が何かを伝えるということが一番濃い時間だし、そこに全てを濃縮されている気がするんです。その中で自分達が、来てくれた人と感じ合えたことや、共有できた想いから生まれてきたものが僕らの音楽なんです。でも何故このアルバムに『experience』というタイトルをつけたかというと、自分達バンドの経験も大切だけど、日本中としてもこの2年間というのは、やはり特別な歳月だったと思うし、時期的にも大変な状況でしたよね。


ー 確かにそうですね。

山村：その中であえて『希望』とか『明日』というタイトルをつけるのではなくて、この2年間で経験したこと…と言うと、過去の言葉に聞こえるかもしれないけど、本当はきちんと明日に向かっている。苦しいことも嫌だった想い出も、今となっては良い思い出として誰かと出会えることも出来るし、そうやって「良い経験だった」と言えるような年にしなければいけないと、みんな思っている気がするんです。


ー 確かに、あえて震災にスポットを当てるとすれば、一言では片付けられない想いや経験を大勢の人が沢山してきましたが、そこで留まってはいけないという気持ちがどんどん強くなってきている気がします。

山村：誰もが生きる意味を考えたこの2年を、僕らはしっかり音楽にしないといけないと考えました。そういう意味で、「経験」という言葉はみんなにも響くのではないかと思ってこのタイトルをつけました。


ー 震災後、リスナーもミュージシャンも音楽への向き合い方が変化してきた部分があるように感じるのですが。

山村：確かにそうですね。それまでが平和だったというのもあって、震災後は良くも悪くも「音楽はいらない」という声を聞くことがありました。勿論本当に不幸だった方々も沢山いらっしゃいますが、どうしても直接的に経験していないとリアルに感じられない痛みというのがあったのも正直なところだと思うんです。