ー それに随所に細かい効果音も入っていますよね？

あれは犬の鈴や笛を意図しています。言うことをきかせたり「前へならえ」って整列させられる時って、ピッピッピッって笛を鳴らされるじゃないですか。


ー はいはい！

それと同じというか、犬を飼いならす時に鳴る象徴的な音を使いました。


ー この曲の中で「自由とは何でしょうか?」と問う部分があるけど、優くんが思う自由は何？

僕が思う自由とは、自分で手に入れた沢山の選択肢の中から、自分自身で選べることだと思うんです。例えば、ただ感情任せに「酒呑みたいから呑む！」というのは、感情に支配されている状態であって、自由ではない。だからお金がなくて「金欲しい！金くれ！」と言っているのに、「俺は自由に生きていくんだ」と言うだけで、実際は何の状態にもなっていない人は自由とは呼ばないと僕は思うんです。それは自分の欲望だけに縛られている人。


ー それはある意味での不自由だと？

そう！だから自由であるためには沢山の準備が必要だと思うんです。子どもの頃の夏休みが良い例で、計画をきちんと立てて宿題を全部終わらせている子は、そうはいなかったと思うんですが、でもそれがもし出来たならば、その時「自由」を感じられていたかもしれない。


ー ちなみに優くんは？

僕は全く真逆で、最後の最後の日まで宿題をやらない子どもでした（笑）。だからいつも頭のどこかで「宿題やらなきゃな。」という気持ちがあるんですよね。あれを自由と呼べるわけないだろうと自分でも思っていましたが。


ー 私もそうだった…。

あはは。その感じで言えば今、僕が音楽をやっている上で思う自由とは、出来ることの選択肢を増やすこと。ギターも弾ける、ベースも弾ける。ちょっと下世話な話ですが、どこの会場でもライヴが出来る。どこの会場でライヴをやりたいか自分で選択できる。路上でしかライヴが出来ない人間が「俺は路上を選んでいるんだ。」と言っても、それは自由ではないじゃないですか。


ー たしかに。

路上を選んでいるのではなく、路上でしか出来ないんでしょ？って。それはやせ我慢であって、自由に音楽をやっている上で、路上を選んでいるということとはちょっと違ってくると思うんです。だからずっと続けている人たちはやはりすごくたくましいし、第一線で活躍している人たちにはそれなりのカッコ良さがある。でもそのためには、時に“出来レース”みたいところに身を置いたり、自分の意志とは全然関係ないことをやらされているような時間を持たなければいけない。その自分と戦わなければいけない。働くことや生きることというのは、そういう自分との葛藤が多いんじゃないかと思うんです。飼いならされているような気持ちになってしまう時もある。でもきっとその向こう側に真の自由はあるんじゃないかなと。


ー 今の言葉で「自由」へ対しての意味も、歌詞の意味もすごく納得出来ました。

良かった。まぁ、考え方は人それぞれでもあるんですけどね。僕の中ではそう定義づけています。


ー アルバムラスト曲の“おやすみ”は、WOWOW連続ドラマW東野圭吾 「変身」の主題歌。

はい。 僕は東野さんの作品が好きで、「容疑者Xの献身」なんて、涙なしには読めなかったです。


ー あの作品は良かった！

良かったですよね。あと僕が好きなのは「聖女の救済」。あれ読みました？


ー いや、まだ読んでいないんです。

あれ面白かったですよ。まぁ東野さんの作品はみんな面白いんですけどね。だから、今回この曲が主題歌に決まったのは、本当に嬉しいです。


ー「東野圭吾 変身」の公式サイトで予告編を少し観ました。サスペンス的な怖さを感じさせる質感に、この穏やかな曲はある意味すごく合っていて更に本編を観たくなりました。

そう言ってもらえてすごく嬉しいです！この “おやすみ”という曲は、友達とLINEをしていて書いた曲なんです。


ー LINEをしていて？

友達とのLINEの内容をそのまま曲にしたんです。


ー 友達？

友達です。


ー 友達…？

友達ですよ！え、何で？！


ー いやいや（笑）、すごく愛情に溢れている歌詞だから、正直恋人とのやりとりを連想していました。

あー、なるほど。でもこれは本当に友達なんです。友達とグループでLINEをやっていて何人かと共有していた言葉です。


ー なるほど。だとしたら、こうやって互いを慈しみあえるというか、大切に思える友達がいるというのは素晴らしいね。

そうですね。まぁ夜だったんですけど、「夜に書いた手紙は出すな」という言葉があるじゃないですか。


ー あるある（笑）。

それを少し感じましたけどね。自分でそんなLINEを送っておいて「随分恥ずかしいこと送ったな…。」って（笑）。僕は心を開くとこんなに恥ずかしいことを言うんだなと思ったら、冷静な部分の自分としては放っておけなかったです。


ー あはは！

まぁ楽曲にすることで成仏させるというか。


ー 成仏って（笑）。

実際この時は友達が風邪を引いていて、心配していた状況ということもあったんですが。


ー そうだったんだ。きっとファンの人たちは「高橋優くんは、こういうことをLINEで友達に送っているんだ。」って、この曲を聴きながら歌詞を観ながら感じられるわけだ。

そしたら友達になりたくないんじゃないですか？


ー あはは！そう？

あ！でも、いつもこんなことを送っているわけじゃないですよ！これを送ったのは1回きりですから、それだけはちゃんと書いておいて下さいね。


ー じゃあ、その発言だけカットしておきます。

なんで！なんでカットするの！！

＜一同爆笑＞


ー 最後にエムファン読者のみなさんに一言お願いします。

10月から来年の3月まで、今迄で一番長く大規模な全国ツアー【高橋優LIVE TOUR 2014-2015「今、そこにある明滅と群生」】を開催します。おそらく今、この記事を読んでくださっている方々のお近くの会場まで、僕が皆さんに会いに行きます。今回のアルバム『今、そこにある明滅と群生』を聴いて欲しいのは勿論ですが、是非アルバムに入っている曲を生で届けさせて下さい！アルバムよりも、ライヴでクオリティを上げたいと考えているので、生のライヴで聴く感じとアルバムの音を聴き比べていただくのも、きっと楽しいのではないかなと思います。是非ライヴでお会いしましょう！


ー ありがとうございました。ツアーも楽しみにしています。


取材・文／秋山昌未


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