ー レイプという言葉だけ見ると、ちょっと驚くけど、今の金田君の想いや実際歌詞をみると、ここでいう “ レイプ “というのは、最大級の愛だね。

そう！自分を全部壊してくれっていうね。あなたは私を壊してくれたし、2人でだったらまた始められるという曲を書きたかったんです。何かが終わってしまった時に独りでは無理だけど、2人なら楽しいんじゃないかなって歌うために色々な言葉を考えたんです。でもその人に救われたわけではないし、自分の価値観とか概念をマジで全部ぶち壊してくれるということを歌う時に、まぁこの言葉しかないかなって思ったんです。
どうやらニルヴァーナに同名の曲があるらしいですけどね。


ー そうそう。

でも僕は知らないんです。ニルヴァーナ聴いて育ってないから（笑）


ー あははは。ところでこの「レイプ・ミー」は金田君のソロアルバム『young apple』に入っているよね。

はい。アコースティックヴァージョンとエレキギターヴァージョンが入っているので、今回はヴァージョン3という感じですね。あの『young apple』自体が永遠の愛をテーマに作っているのでその続きなんですが、『young apple』との絶対の違いって、一人だと美しさと汚さを、同じ曲単体では同時に表現できなかったんです。だから2ヴァージョンにしたんですが、今回はTHEラブ人間なので、その両方を共存できるだろうと思って。ピアノとヴァイオリンとコーラスで美しさを際立たせて、ギターサウンドは今迄のTHEラブ人間の楽曲の中でも一番汚い音作りにしました。


ー 汚い音作りというのは具体的にどういうこと？

理論に反した弾き方だったり、音的に人殺しみたいな感じというか、レイプそのものみたいな音をギターで出せたらいいと思いました。全部をなぎ倒すような鋭さ。とてつもなく痛々しい音を出したくてアンプもギターもいくつか試しました。


ー そういうのがTHEラブ人間でやれることの魅力のひとつでもあるね。

そうですね。結局そこの部分は一人じゃできないし。僕は弾き語りで完成系を見せようとはしてないし、実際限界もある。僕が悟った一人でやれることは、未完成たる美しさなんです。THEラブ人間も、未完成な人が五人揃って、「完成はしない」という美しさだと思うんです。だから未完成のままというのは一緒なんですけどね。


ー 完成ってどこにあるんだろうね。

完成はないですね。未完成が5倍あるというのがTHEラブ人間の魅力だと自分では思っています。どこまでも飛んでいけそうな部分があると思っているし。この5人で作ったものを、一人の人間が聴くわけじゃないですか。そこでその人が引っ張り上げられる楽曲達だからその人の生活の中に入った時点で出来上がる感じです。


ー 6番目の音が生まれるんだね。

そうですね。


ー 確かに「レイプ・ミー」で言えば、えみ（おかもとえみ）ちゃんの声が入るとまた印象も変わるよね。

ええ。THEラブ人間として考えた時に、 えみ の声はメインヴォーカルをするにはクセがないので僕的には自分の楽曲にすごく映えると考えています。彼女は声がシブイんでね、見た目とは違って（笑）


ー うん！かわいいもんね。

結構甘そうな声出しそうなんだけど骨太なので、男っぽくていいです（笑）だから、えみ がTHEラブ人間に入った時から、僕の作る楽曲にはぴったりの声だと思っていましたよ。ああいう感じは久々でした。それまでもTHEラブ人間やる前から色々な女性ヴォーカルやコーラスをゲストで迎えることはあったけど、ここまでしっくりくるというのは珍しいです。


ー 喋ると可愛いのにね。

そうなんですよね。どうやら喉から変な骨太さが出るみたいで（笑）


ー 変なって！（笑）

だけどこの「レイプ・ミー」は大切な曲ですね。ここ2年間では一番好きな曲かも。勿論自分の曲は好きだけど、聴き返さないし持ってないんです。


ー そうなんだ。

はい。僕は演る側だから。


ー あくまでも聴き手ではなく演者という立場なんだ。

勿論それは自分の作品にのみ限ることですけどね。でもこの曲と、「抱きしめて」（『これはもう青春じゃないか』収録）だけは聴き返します。