ー 質感は全然違うけど、確かにその2曲は圧倒的な強さを持っているよね。

「抱きしめて」以降の楽曲はもう雰囲気が全然違うんです。「砂男」みたい曲はもう二度と書けないというのが分かっているし。僕はもう生活も順調だしバイトの面接を受ける必要もない。


ー たしかにね（笑）

「抱きしめて」を書けた時から、もっと生活を歌っているんです。「砂男」も「東京」もそうだけど、もっと生活に寄り添ってる。例えば今迄はバイトの面接落ちたとか、ゲロ吐いたとか、生活から少し浮き出たものを歌っていたのに対して、「レイプ・ミー」なら ”お風呂に入る君をずっとずっとみていたよ” とか、ただ化粧してる姿をみていたりするだけなので、今はそうやって、もっともっと生活の浮き上がらなさそうな部分すら歌に出来るようになりました。そういう意味では前まで見えていなかったところが見えてくるようになりましたし。例えば “コーヒー飲んだ” “携帯が鳴った” “灰皿にぎゅっとすり潰した” っていうようなことを自分の言葉で歌えるようになったかも。


ー 今後の作品も楽しみですね。

自分でもそう思っています。僕は銀杏ボーイズの峯田さんとか、毛皮のマリーズの志磨さんとかと違って天才ではなく普通の人間なので、普通のことを普通に歌えるのが一番自分の求めていることだと思っています。


ー 天才にはなりたい？

なれないです。天才になったら僕は努力しなくなる人間なので（笑）。僕は寝てる間以外、歌詞と曲のことしか考えていないから、やっぱりそうはなれないな。でもそんな自分が一番居心地がいいです。だから、もしお金持ちになって女の子にチヤホヤされたり車や家を買ったとしても、きっとそのことを書くと思いますよ。


ー 変にそういう部分を隠すこともせずに？

それが自分の普通になるわけでしょ。それなら普通のこと歌いたいし。「俺のベンツで、港区の麻布のクラブで酔っぱらって、お金あるから代行運転呼んで帰ったぜ」みたいな曲歌うと思いますよ（笑）


ー それって、聴きたいような聴きたくないような（笑）

あはは、まぁ今は単に言葉を並べただけですけど、僕は自分の言葉を知っているし、それを言ったらいままでの楽曲だって聴きたくないようなこといっぱいありますよ。だからそれが生活の普通になればそれを歌いたいし、そこがTHEラブ人間が持っている説得力だと思います。


ー もうすぐTHEラブ人間企画イベント「下北沢にて ‘11」（11月27日）ですね。 改めてこのイベントのコンセプトを教えてください。

昨年9月から始めて今回が2度目ですが、昨年のコンセプトは結成して1年半で自分達の周りにはこんなに素敵なバンドが沢山います。というのを自慢するだけのイベントでした（笑）


ー 自慢っていうのがいいね！

僕は自慢って言ってるんですけどね（笑）下北の俺らの周りにはこんなカッコイイバンド達がいるんだけど、そっちはどうだ！ってね。今年はもうそんなの自分達でも知っているから、相乗効果ではないけど、出会いを埋めるようなイベントにしたいです。下北沢はTHEラブ人間にとっても初めてメンバーが集まった街だし、一生の友達とも下北沢で出会えたので、そういう感覚をお客さんにも持って帰ってもらえたらいいなと思っています。このサーキットイベントの楽しさって、自分達で決められることなんですよね。次は何時にどの会場で誰をみるとか。だから自分達次第でつまらないものにもなるだろうし、楽しくもなる。しかも、今回、街ぐるみなんですよ。「下北沢にて ’11」のリストバンドを見せたら飲食店も何店舗か割引してもらえたり、商店街を絡めたり 世田谷区に住んでいるというのを条件にした中学校高校のブラスバンド部やオヤジバンドも出ます。


ー それ凄いね。本当に街ぐるみなんだ。

はい。昨年は本当に見せつけるだけだったので、今年は広げていかなきゃなって思っています。結局アンダーグラウンドシーンの、あるロックバンドの自主企画というところで留まったら例えば5バンド位集めてイベントやるのと変わらないじゃないですか。だからもうちょっと広い観点で音楽があるというのにしたかったんです。やっぱり音楽が中心にあるわけだから音楽の元に集まった人達が町中にいる状況を作りたいです。


ー やっぱり下北沢という場所を大切にしているんだね。でも確かにアンダーグラウンドの中から抜け出た面白さというのも感じられそう。

そうしたいですね。