11月30日(金)、「たむらぱん 2012 ワンマンライブ全国ツアー」のファイナルを飾る東京・SHIBUYA-AX公演が行われた。
このツアーは、10月にリリースされた5thアルバム『wordwide』発売記念として全国7箇所で組まれていたライブだったが、AX以前に行われた各地のライブの評判は高く、さらにこの日のライブには、たむらぱんが楽曲提供を行ったアイドルグループ、私立恵比寿中学(エビ中)がゲスト参加するということもあり、会場はスタート時から異様な熱気に包まれていた。
おだやかなSEから一転、テンポのよいリズムから「ヘニョリータ」がスタートすると、小さい体いっぱいに跳ね回って歌うたむらぱん。バックを固めるメンバー5人は横一列に並び、鉄壁のアンサンブルを発揮する。続く「スポンジ」、「ジェットコースター」と、序盤からパワー全開で畳み掛ける展開に会場はヒートアップ。パワフルかつ伸びやかな歌声は、活動5年目を迎え、いちだんと魅力を増している。
「ジェットコースター」を歌い終え、一息入れたたむらぱんは、ここでスペシャルゲストを紹介する。大きな声で「私立恵比寿中・・・」と呼び込むものの、グループ名を思い切り噛んでしまい、一度出てきてしまったメンバー全員がもう一度はけるという、彼女らしいハプニングもあったが、仕切りなおして私立恵比寿中学のメンバー全員が登場。いつも行っているという、一人ひとりのメンバー自己紹介タイムのあと、最後にたむらぱんが「見た目は子供、中身は大人、近づくと意外と大人、出席番号圏外、たむらぱんです!」とエビ中スタイルで自己紹介し、会場は暖かい笑いに包まれる。
このゲストパートでは、エビ中を従えて、たむらぱんが作詞・作曲で楽曲提供した個性的な2曲「結果オーライ」「大人はわかってくれない」を披露。この2曲は両方ともポップなサビと複雑なアレンジが施されているが、それを生バンドで完璧に再現するバンドの凄腕と、アイドルグループならではのキラキラした振り付け、その真ん中でメインパートを歌うたむらぱんという構図は、ステージに意外な一体感を生み出す。驚きなのは、たむらぱん自身もエビ中と同じ振り付けで踊っていたこと。でも、たむらぱんは「しんぱい」のミュージックビデオで振り付けに初挑戦して以降、「new world」でもやっており、意外と得意分野なのかもしれない?この2曲を終えると、エビ中の面々は元気よく退場。普段アイドルのステージを見慣れない観客からも暖かい拍手が送られていた。
再び本編へと戻ったたむらぱん。アルバムの中で透明感溢れる楽曲「ふれる」を皮切りに、名曲「ラフ」、「ゼロ」を連投。あれだけの派手な演出の後なのに、たったひとりの歌声で、ふたたび会場を虜にしてしまう。そして久々に披露された「十人十色」では、バンド全体が一丸となった圧巻のパフォーマンスで観客は釘付けとなった。
この日のハイライトは、このあとの2曲のパフォーマンスで訪れた。
「言葉」の大切さに気付いたという5thアルバム『wordwide』の話に及び、ある種赤裸々なまでに自分の気持ちを言葉にしたという「ぼくの」を静かに歌い始めたたむらぱん。この曲では、まさに歌と言葉がストレートに観客の心に染み入っていく。「静かな絶唱」とでもいうべき「ぼくの」が終わると、会場は凛とした空気に包まれていた。
そのまま、アルバムではShing02のラップをフィーチャーし、ラストを飾るアブストラクトな新機軸「でもない」を披露。この楽曲は、音源ではヒップホップ調のドライなアレンジも特徴的だったが、この日はやわらかい感触の演奏をバックに丁寧に言葉を紡ぐように歌われており、最後にはメジャーキーで締めくくられるというアレンジとなっていたが、たむらぱんが伝えたかった「言葉」は、このアレンジによって何倍にも観客に伝わっていた。
その後、雰囲気をガラっと変えてメンバー紹介。これまでの活動を支えてきた不動のバンドメンバーに感謝の言葉を伝えつつ、一人ひとりのメンバーから言葉をもらうという初の試みが。メンバーからは、変幻自在で時には人間業を超えたリクエストをしてくるというたむらぱんの楽曲を、どうにかしてバンドで形にするぞという意気込みが伝わってきて、努力に裏付けられたライブの凄さに納得させられる。
後半戦は、シングル「new world」、ノリの良い「ハイガール」、たむらぱんの新たな真骨頂「でんわ」、めまぐるしい展開を見せる「知らない」とテンポよく続いていく。そして、「残り2曲となりました。もう思い残すことはないからこのまま帰りたいんですが(笑)、最後に“大仕事”をしっかりやって帰りたいと思います」と告げて始まった「おしごと」。これが本日2度めのハイライトとなった。
5thアルバムの2曲目に収められたこの曲は、たむらぱん史上最も複雑怪奇かつプログレッシブな曲で、一体ライブでどう再現するのか?と気になっていたファンも多かったようだが、これが想像をはるかに
超える圧倒的なステージ。メンバー全員による迫力のコーラスワークと、一人ひとりのメンバーによる
超絶技巧、それらを中心で操るたむらぱんの歌声とパフォーマンス・・・すべてが合わさり、各パートを寸分たがわずキメたときの快感・・・「おしごと」は、まるで大掛かりな演劇を見ているようだった。
そして、本編最後をライブ映えする「直球」で締めくくったたむらぱんは、満場のアンコールに応え、代表曲「責めないデイ」「SOS」を実に楽しそうにパフォーマンスし、会場をノックアウト。過去最長となる2時間のパフォーマンスを終え、ステージ前に出てきたたむらぱんとメンバー達。まさにやりきった感あふれる6人の笑顔は、5年間の集大成の夜を象徴するものだった。この先のたむらぱんの展開がますます気になって仕方がなくなってしまう、そんな充実した夜だった。
■「たむらぱん 2012 ワンマンライブ全国ツアー」
11/30(金) @SHIBUYA-AX セットリスト
01. ヘニョリータ
02. スポンジ
03. ジェットコースター
04. 結果オーライ(ゲスト:私立恵比寿中学)
05. 大人はわかってくれない(ゲスト:私立恵比寿中学)
06. ふれる
07. ラフ
08. ゼロ
09. 十人十色
10. ぼくの
11. でもない
12. new world
13. ハイガール
14. でんわ
15. 知らない
16. おしごと
17. 直球
アンコール
18. 責めないデイ
19. SOS
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