菊地成孔氏が、12月26日より初の自身のレーベル設立!
この度、DCPRG、菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール、菊地成孔ダブセプテッド等幅広く活動中の彼の作品をここ≪TABOO≫に集約します。また、新たに菊地成孔によるプロデュース作品もこのレーベルからリリースの予定です。
レーベル名は、1940年代後半のサンジェルマンデプレ界隈で、モダンジャズが最新のクラブミュージックとして熱狂の猛威を振るっていた時代の、最もイケていた地下クラブの名前を拝借しています。
待望の第一弾は、2014年3月19日、菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラールの5年振りの作品『戦前と戦後』。 この作品は、<ポリリズムを駆使した複雑かつ骨太なアレンジのインスト/毒々しいほどに甘いラテンラウンジ/現代音楽の響きを持つ集団即興とラテンリズムのマッシュアップ>といった従来の定番コンテンツから大きく舵を切り、タイトルチューン「戦前と戦後」を含む全11曲中、10曲が菊地のヴォーカルのソングブックという異色作にして最高傑作!カバー曲として、ディック・ミネ『ただひととき』、薬師丸ひろ子『WOMAN Wの悲劇より』、フランク・オーシャン『Super Rich Kids』他、小泉今日子に提供楽曲のセルフカヴァー等も大胆に収録されています。
なお、今作品はSACDとCDのハイブリッド盤に、選りすぐりの過去ライブ映像DVDとの二枚組になる予定。
■ 菊地成孔オフィシャル
http://www.kikuchinaruyoshi.net/
■ レーベルオフィシャル
http://www.taboolabel.net
http://www.villagemusic.co.jp/
<TABOO>立ち上げにあたり
一昨年に個人事務所「ビュロー菊地」を構えまして、御陰さまで今年は法人格も取得し、小さいながらも一端の会社と相成りましたので、気がつけばもう50ですし、狭いながらも楽しい我が家、手前の庭でレーベルでもデッチあげ、好きなものばかりこしらえて、隠居まで楽しくやって行こうかな。どこかの酔狂な会社が寄って来たらその都度のっかりながら。等と、柄にも無くスローダウンな人生設計を弄んでおりました所、何とSONYさんからお声がけ頂いたと聞き及び、最初は「はははは冗談でしょう世界のエスオーエヌワイがこんなロートル相手にははははは。家電の方じゃないの。ウチに来ないか、Blu-rayの解説書きとして。とかですよ上限」等と笑っていたのですが、何と冗談ではないらしく、契約、しかもレーベルを持たないかというプランニングまで頂戴し望外の喜びとはこの事、二つ返事でやらせて頂く事になりました。VILLAGE MUSIC部長の青木幹夫氏に感謝します。
お話を頂く直前までのワタシの状況は、一部の方はご存知でしょうが、impulse!の<米国籍を持たぬアジア人初の契約者>として、DCPRGで2枚のアルバムをリリース後、契約を終了し、何の予定も無いフリーランスの状態でした。ですので前述の楽しい隠居プランを立てていたのです。
また、ワタシはマイルス・デイヴィスの研究家として研究書まで書いている身とはいえ、自分をマイルスと重ね合わせる程の素晴らしい誇大妄想症(マイルスは研究家を完全に移入させてしまうカリスマです)の患者ではありません。ただ「エレクトリック・マイルス・マナー(上っ面だけで、全然違うんですけどね。ボトムは)のバンドがimpulse!っちゅうのは21世紀日米ジャズ文化の捻れとしてどうだったのかしらね。うははは」等と思っていた所でしたので、知人にSONYさんの件を告げると、上目使いでにやにやしながら「菊地さん、やっぱマイルスと同じになりましたね」等と言われ「オマエざけんなよー!勘弁してくれよー」と殴りながら苦笑せざるを得ませんでした。
マイルスは歴史に残るあの激烈なエゴによって、喉から手が出そうな程の欲望のあり方で大メジャーであるコロムビア(言うまでもなく、後のCBSソニー)との契約に邁進して行く訳ですが、ワタシがここまで書いた、我ながら呆れる程に成り行き任せ、他人任せの音楽家人生はブラフや自嘲や韜晦では決して無く、単なる詰まらぬリアルであります。マイルスが自己のレーベルを持ってプロデュースワークに精を出す、等という勤勉で誠実な音楽家でない事は何方もご存知でしょう。
コンテンツとしましては、現在ワタシが運営している4つのバンド(ペペ・トルメント・アスカラール、DCPRG、ダブ・セプテット、JAZZ DOMMUNISTERS)に加え、長らく制作していない自分のソロアルバム、そして何より、ワタシのモチベーションをバッキバキにクソ上げまくっているのは、若く優秀な新人達です。年間にワタシのリーダー作を2作、プロデュースワークを2作。というリリースペースで始めようとプランニングしておりますので、ユーザーの皆様に於かれましては、これからは年始にお年玉をアルバム4枚分だけ確保して頂いた上で、ゆったりとその年を迎えてくださるよう、これはソニー・ミュージックからのお願いであります。
レーベル参加予定アーティストの一覧をズラッと並べてハクでも付けてやろう、といった派手な気分が無くもないのですが(既に初年度のラインナップの中に、ジャズファンならずとも腰が抜けたまま飛び上がるようなタレントさんが含まれておりますし)、それは追々告知させて頂く事とし、レーベル第一作はペペ・トルメント・アスカラールの、実に4年ぶり通算4枚目のアルバム「戦前と戦後」になります。内容に関しては別掲のテキストにあたって下さい。何事も最初が肝心といいますので、我ながらエゲツないほどの強烈さを心掛けて制作しました。10年来の御贔屓筋からビギナーの皆様まで、わざわざ口にするのも野暮な程の、このクソヤバい昨今の気分を嘲笑うかの様に、広く、強くお楽しみ頂けると思います。
レーベル名は、1940年代後半のサンジェルマンデプレ界隈で、モダンジャズが最新のクラブミュージックとして熱狂の猛威を振るっていた時代の、最もイケていた地下クラブの名前を拝借しています。
音産の状況も、北東アジア、いやさ世界各地域の状況もこれこの通り、そして過去、現役のアーティストがビッグカンパニー傘下でレーベルを運営し大成功をおさめた確率は、どれだけ高めに見積もっても「ムッチャクチャ低いよ。つうかひょっとしたら無いかもよ」以外の言葉は無く、つまりは全方位的にアウェイな地点からのスタートになります。全米で最も信頼のおけるヒップホップマガジン「XXL」の最新号では、ケンドリック・ラマー、ジェイ・ロック、ブラック・ヒッピー等、最もエッジでイルなメンバーで構成される最強集団TOP DAWG ENTERTAINMENTのCEOアンソニー・フィフィスですら「それでも我々は最高のスタートを切った、とはとても言えない」と、音産に関する非常に正直な展望を口にしています。
しかし、昔からの御贔屓筋に於かれましてはご存知の通り、ワタシは平和で安定した時代には居眠りか神経症、ガス充満のヒヤヒヤする乱世に絶好調で若返るという、非常にタチの悪い、呪われた男ですので、全スタッフ、全メンバー、全レーベルメイト共々、総力を結集し、「TABOO」が、安定した世界平和、誰もがのんびりと暮せる素晴らしい未来の到来とともに閉鎖するまでの間、もう癒されども癒されども無理だと、毎夜喘ぎながら眠りにつく国民の皆様の心と体に効く、的確な有毒性と薬効性を湛えた最新の呪物として、選りすぐりの音楽をご提供させ続けて頂く所存ですので、ご期待を乞うと同時に、共にこの手酷い時代を楽しみ尽くすべく、共闘のエールを送らせて頂きます。ご指導ご鞭撻の程ヨロシクお願い致します。
2013年12月25日 聖夜 菊地成孔
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